なぜ自転車に車検制度がないのか？車との違いと導入が進まない理由を解説

自動車には車検制度がある一方で、自転車には車検制度が存在しません。毎日多くの人が利用する自転車に安全点検制度が導入されていないのはなぜか、と疑問に思う方も多いでしょう。ここでは自転車に車検が導入されない背景や、導入した場合の課題について詳しく解説します。

車検制度の目的と自転車への適用の難しさ

自動車の車検は、国が定める保安基準を満たしているかを定期的に確認する制度です。エンジンや排ガス、ブレーキやライトなど多岐にわたる点検項目があり、整備不良車が公道を走ることを防ぐ役割を果たしています。

一方、自転車は構造がシンプルで、事故原因の多くが車体不良よりも交通ルール違反や利用者のマナーに起因するため、車検制度を適用する意義が薄いとされています。

仮に自転車に車検制度を導入すれば、検査設備や人員、登録制度の整備が必要になります。検査費用を利用者が負担する形になると、安価で気軽に利用できる自転車の特性が損なわれてしまいます。特に通学や通勤で使う学生や一般家庭にとっては大きな負担となるでしょう。

実際には、自転車安全整備士やTSマーク点検制度といった民間ベースの安全点検制度がすでに存在しています。これらは自転車販売店や整備店で受けられるもので、ブレーキやライトのチェック、整備不良の改善などが行われます。また、TSマークには保険も付帯しており、安全と補償の両面をカバーしています。

もし車検制度を導入すると、登録制による管理や整備不良自転車の排除といったメリットも考えられます。しかし、国民全体の負担増や制度運営の非効率性が指摘されており、現時点では現実的ではありません。むしろ、利用者の交通ルール遵守や定期的な点検・整備を促す啓蒙活動が現実的な対応とされています。

自転車に車検制度が導入されない理由は「構造のシンプルさ」「事故原因の特性」「費用負担の大きさ」にあります。すでに民間レベルで整備制度が存在するため、現状では新たに車検を導入する必然性は低いと考えられています。自転車利用者にとっては、自主的な点検と安全意識の向上こそが最も重要といえるでしょう。