なぜ『ベスト・キッド』の格闘技シーンは時代劇の殺陣のように遅く見えるのか?

格闘技、武術全般

『ベスト・キッド』は、1980年代に公開され、今でも愛され続けている名作です。しかし、その中の格闘シーンが現代の格闘技映画に比べて遅く感じるという意見があります。では、なぜそのように感じるのでしょうか?今回は、映画における格闘シーンの演出の違いや時代背景について考察していきます。

1. 映画制作の時代背景と演出スタイル

『ベスト・キッド』が公開された1984年は、アクション映画の演出スタイルが現在とは大きく異なっていました。1980年代のアクション映画は、格闘技のシーンにおいても、演技の緊張感や心理的な要素を重視する傾向がありました。そのため、戦いの動きが急激でなく、ある程度ゆっくりとしたテンポで描かれることが多かったのです。

また、当時は特撮やスタント技術が現在ほど発展しておらず、リアルなアクションを表現するためには、演者が確実に技を決めるためにスピードを抑えることが必要でした。

2. 格闘シーンにおける“間”の重要性

『ベスト・キッド』をはじめとする1980年代のアクション映画では、格闘シーンにおける“間”(間合いや緩急の調整)が重要視されていました。この“間”がゆっくりとした動きで表現されることが多く、観客に対して強い印象を与えることが目的でした。

例えば、映画の中でダニエル・ラルーソ(主人公)が“カラテ”を学びながら戦うシーンでは、戦いの合間にじっくりと動きが描かれています。このように、急激な動きではなく、少し遅めのスピードで練習や試合を展開させることで、技の習得過程や登場人物の心理を強調する効果があります。

3. 格闘シーンの動きが“殺陣”のように見える理由

『ベスト・キッド』の格闘シーンが、時代劇の殺陣のように見えるのは、まさにその“間”を強調した演出が影響しています。日本の時代劇でよく見られる“殺陣”(戦いの演技)は、リアルな戦闘よりも演技的な美しさや緊張感を重視するため、あえてゆっくりとした動きや大きな振りを使います。『ベスト・キッド』の格闘シーンにもそのような要素が取り入れられており、戦いの動きが観客に訴える心理的な要素を強調しています。

そのため、現代のアクション映画に比べると、動作が遅く見えるのは自然なことと言えるでしょう。特に、スピード感を重視した現代の格闘シーンと比較すると、その違いが一層目立ちます。

4. 現代の格闘映画との違い

現代の格闘映画では、スタントやCG技術が発展したことにより、よりダイナミックでスピード感のあるアクションが可能になっています。『ベスト・キッド』と同じく格闘技を題材にした映画でも、最近の作品では素早い動きやリアルな戦闘を強調したものが多いです。

例えば、現在の映画では格闘技の動きが素早く、戦闘シーンが緊迫感を持って展開されます。スタントマンやCGを駆使することで、観客に迫力を与えることができますが、1980年代の『ベスト・キッド』ではそのような技術がなかったため、意図的に動作がスローモーションのように見えることがあったのです。

まとめ

『ベスト・キッド』の格闘シーンが時代劇の殺陣のように遅く見えるのは、当時の映画制作スタイルや演出方法、そして技術的な制約が影響しているためです。今の時代の映画では、よりスピード感とダイナミックさが求められていますが、『ベスト・キッド』はその時代の特徴を反映した名作であり、格闘技シーンの“間”が登場人物の成長や心理的な描写に重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

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