野球におけるリリーフ投手の起用方法は、試合の状況によって大きく変わる重要な決断です。特に1点差で負けている終盤と、3点差で勝っている終盤で、なぜ強力なリリーフ投手を後者に起用するのかに疑問を持つファンも多いでしょう。この記事では、WPA(Win Probability Added)やLI(Leverage Index)を考慮したリリーフ投手の最適起用法について深掘りしていきます。
WPAとリリーフ投手起用の重要性
WPA(Win Probability Added)は、試合における投手の貢献度を測る指標であり、特にリリーフ投手の起用においては非常に重要です。WPAを最大化するためには、試合中の状況に応じて最適な投手を投入することが求められます。例えば、1点差で負けている場面では、同点にするために最も信頼できる投手を投入すべきです。この局面では試合の行方が大きく左右されるため、WPAの貢献が非常に高いのです。
一方で、3点差で勝っている場面では、1点差の場面に比べて試合の流れを変える可能性が低いため、WPA的には低いレバレッジとなります。このような理由で、リリーフエースが3点差の場面に登板することが不適切に見えることもあります。
レバレッジ指数(LI)を活用した投手起用
Leverage Index(LI)は、試合の重要度を示す指標で、特に1点差のビハインドの9回裏などの「高レバレッジ」な場面では、投手の貢献度が試合結果に大きな影響を与えます。LIが2.0以上となる場面では、投手にかかるプレッシャーと試合への影響が極めて高くなり、その場面で最も信頼できる投手を起用するのが理にかなっています。
逆に、3点差でのリード時のLIは1.5程度と、比較的低いため、エース級のリリーフ投手をここで使うのは効率的ではないことが多いです。特にシーズン全体で見た場合、このような場面でのエース投手投入が成績に与える影響は小さく、むしろ重要な試合のために温存する方が得策と言えます。
セーブの概念と実際の戦略のギャップ
「セーブ」という記録に重きを置く伝統的な戦術では、試合の終盤にリードを守るためにエース級のリリーフ投手が起用されることが一般的です。しかし、セーブの記録が重視されるあまり、WPAやLIの観点から最も効果的な投手起用がなされていない場合も多くあります。
特に、レイズの元監督ジョー・マドンなどが提唱した「セーブ概念無視の投手起用」は、リリーフエースを最も影響力のある局面に投入するという戦術です。この考え方は、実際には試合ごとに最適な投手を起用することがより多くの勝利に繋がるという意味で、セイバーメトリクス的にも支持されています。
WPA最大化のための投手起用法とMLBの変化
近年、MLBではWPA最大化を目指す投手起用が徐々に普及してきています。例えば、1点差で負けている場面でリリーフエースを投入することで、逆転のチャンスを広げる戦略が取られることが増えてきました。この戦術は、伝統的なセーブの記録を超えて、試合の勝率を高めることに繋がります。
ただし、MLB全体で見れば、依然としてセーブやホールド記録に囚われた投手起用が主流であることも事実です。しかし、データ解析やセイバーメトリクスに基づく新しい戦術が普及しつつあり、今後はより多くの監督がこの考え方を採用する可能性が高いと言えるでしょう。
まとめ:1点差の逆転に向けた投手起用の重要性
リリーフ投手の最適な起用法を考えると、1点差で負けている場面でこそ最も信頼できる投手を投入することがWPAの最大化に繋がります。3点差で勝っている場面でのエース投手投入は、効率的ではないことが多く、その戦術はデータに基づく新たなアプローチに変わりつつあります。今後、MLBやNPBにおいても、試合の状況に応じた最適な投手起用がさらに広まることが期待されます。
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