2026年のF1レギュレーション変更に向けて、マシンデザインやパワーユニット(PU)が大幅に刷新されることが発表されています。この中で注目されているのが、カスタマーチーム(供給を受ける側)がどのタイミングで新エンジンの寸法など詳細データを入手できるのかという点です。本記事では、F1におけるエンジン供給の仕組みと、技術情報が共有されるプロセスについて詳しく解説します。
F1におけるカスタマーチームとエンジンサプライヤーの関係
F1では、ワークスチーム(自社開発チーム)とカスタマーチーム(供給を受けるチーム)の間で明確な契約関係が存在します。たとえば、メルセデス、フェラーリ、ルノー、ホンダ(2026年から再参入予定)などがエンジンを供給し、それぞれが複数のチームと契約を結んでいます。
カスタマーチームは基本的にエンジンの設計や改良に関与できず、供給元から提供されるスペックに合わせてシャシーを設計する必要があります。そのため、供給時期や情報開示のタイミングが非常に重要になります。
エンジン寸法や設計データが共有される時期
F1では、カスタマーチームが次シーズン用のマシンを設計するために、供給元からエンジン寸法や取付ポイントなどの技術情報を1年以上前に提供されるのが通例です。特に新レギュレーション導入年のような大規模変更時は、FIA(国際自動車連盟)とサプライヤー間で規定が定められており、一定の時期に全供給チームへ情報共有されます。
具体的には、FIAが認可したエンジンの仕様が確定するタイミングで、供給元メーカーは各カスタマーチームに対してCADデータや寸法図を共有します。これは通常、前年の夏〜秋頃(およそレースカレンダーでいうと第15〜18戦のあたり)に行われます。
なぜ情報共有の時期が慎重に扱われるのか
エンジンの寸法情報は、空力設計や冷却システム、ギアボックス配置などマシン全体の設計に影響します。そのため、カスタマーチームにとって早期の情報共有が望ましい一方で、供給元は機密性を守るために共有のタイミングを慎重に選びます。
特に、ワークスチームと同じエンジンを使う場合でも、ワークス側がアドバンテージを持つように、最新のアップデート情報や内部構造は一部伏せられることがあります。これはF1の競争上の公平性を維持するためでもあります。
2026年の新レギュレーションでの変更点
2026年からは、ハイブリッドシステム(MGU-H廃止、MGU-K強化)を中心にエンジン構造が大きく変わります。これに伴い、各サプライヤーはエネルギー回生システムや燃料流量の調整など、新しい要素を加えたPUを開発中です。
そのため、2025年シーズンの途中から、カスタマーチームにも新PUの寸法や冷却要件などの概要情報が提供される見込みです。FIAは公平性確保のため、サプライヤーが複数チームと契約する場合、同一条件で情報を共有するよう義務付けています。
実例:メルセデスとアストンマーティンの関係
メルセデスは、ワークスチームだけでなくアストンマーティンやウィリアムズにもPUを供給しています。アストンマーティンはメルセデスのギアボックスとサスペンションも供給を受けており、その技術連携の深さが近年の躍進につながっています。こうした関係性の中でも、エンジン寸法などのデータはシーズンオフ前に共有され、両チームのマシン設計が並行して進められるのです。
まとめ
F1のカスタマーチームは、エンジンサプライヤーから次シーズン用の寸法データや設計情報を、通常は1年前後前のタイミングで受け取ります。特に新レギュレーション導入時には、FIAによって情報公開のルールが定められ、すべてのチームが公平に開発を進められるよう配慮されています。つまり、2026年仕様のマシン設計は、すでに水面下で各チームが始めている段階といえるでしょう。
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