ペアスケーティングで「サイドバイサイド3A未達成」は本当に“得点妙味がない”から?技術・採点・構造から徹底分析

フィギュアスケート

フィギュアスケートのペア競技において、ペアが並んで跳ぶ“サイドバイサイド(side‑by‑side)ジャンプ”でトリプルアクセル(3A)を成功させたカップルが未だに出ていないという指摘があります。“コンビネーションジャンプと比べて得点的に妙味がないから?”という疑問も含めて、今回は技術的難易度・採点制度・ペア固有の構造という観点から解き明かします。

ペア競技におけるサイドバイサイドジャンプの位置づけ

まず、ペアスケーティングでは「サイドバイサイドジャンプ」「スロージュンプ」「スローリフト」「スローイングジャンプ(スロースロー)」など複数の要素が義務付けられており、並んで跳ぶサイドバイサイドジャンプは“選手二人がほぼ同時タイミングで同じ種類のジャンプを跳ぶ”という高い技術要求があります。[参照](Wikipedia:Pair Skating 要素解説)

実際、サイドバイサイドジャンプの回転数・種類がポイントになる場面もありますが、近年では“投げ跳び(throw jump)”“ツイストリフト”といった難度が高く、観客・ジャッジ双方から注目される要素の成長が著しいです。

なぜ「サイドバイサイド3A」がまだ成功例がないのか?【技術面】

トリプルアクセル(3A)は単独女子・男子シングルジャンプでも極めて難度の高い技術で、前方助走+3.5回転着氷という構造を持っています。[参照](Wikipedia:Axel Jump 解説)

ペアで並んで跳ぶとなると、以下のような追加的ハードルがあります。
・助走・タイミングを男女二人が“揃える”必要あり。
・片方のパートナーが多少回転遅れ・軸ぶれしても二人の揃いという観点が減点対象となる可能性。
・着氷後のリンク・流れ(ペアの移動・ステップ等)につなげる必要があり、難度を上げすぎると“失敗リスク=構成減点”が大きくなる。

採点制度・得点構造からみる“得点妙味”の実態

ペア競技の採点制度(ISU採点体系)では、ジャンプの難度(基礎点)+出来栄え(GOE)という構成になっています。ジャンプが高難度であっても、失敗・乱れがあればGOEが大きくマイナスとなり、結果として得点が伸びないケースがあります。

また、ペアが跳ぶサイドバイサイドジャンプよりも“ツイストリフト”“スローイングジャンプ”“リフト”といったペア固有要素の方が観客評価・加点ポテンシャルが高く設定されてきた傾向があります。つまり、サイドバイサイドジャンプを無理に難度アップするより、他要素で安全確実に加点を稼ぐ方が戦略的という構図もあります。

構造的要因:ペアの育成・リスク・戦略から考える】

ペアスケーターという競技構造上、“男子+女子”のコンビでは互いの体格・技術発展にばらつきが出やすく、単独ジャンプの延長線で3Aを並んで成功させるには“二人ともシングル3A並の能力”を備えている必要があります。しかし実際には、男子が3Aを跳べても女子が常時3Aを跳べるわけではなく、女子側が安定して3.5回転以上をクリアしながら、男子とタイミングを合わせるという要件は非常に重いハードルです。

さらに、“リスク・失敗=ペナルティ”となった場合のダメージを考えると、ペアチームの戦略としては安定した回転数・揃い・転倒リスク低めの構成を選ぶ傾向があります。結果として、目立つ“サイドバイサイド3A”挑戦よりも“成功確率の高い3A+他要素充実”や“サイドバイサイド2A/3T/3Sの高精度揃い”を選択する流れが出来上がっています。

実例から見るサイドバイサイドジャンプ難度の進化】 例えば、カナダのペア Meagan Duhamel&Eric Radford は、2005年に “サイドバイサイド3Lz(トリプルルッツ)”を成功させるなど、ジャンプ種類の進化に挑んだ先駆的チームです。[参照](

結論として、“サイドバイサイド3Aが未だに見られない”のは「得点妙味がないから」ではなく、むしろ「技術的・戦略的・構成リスクの観点から現段階では効率が低い/成功確率が低い」という理由が主です。

つまり、競技者・コーチにとっては「ハイリスク・ハイリターン」である3Aをサイドバイサイドで挑戦するより、他要素で確実に成功させるほうが総合得点上優位になる場合が多いのです。

まとめ】

ペアスケーティングにおいてサイドバイサイド3Aが未達成である理由は、決して“得点妙味がないから”という単純なものではありません。むしろ、男子・女子二人が3A並の回転能力を揃えること自体が稀であり、さらにペア特有の揃いや流れ・リスク管理を考慮すると、戦略的に別の構成を選ぶのが常態化しているからです。

そのうえで、「将来的にサイドバイサイド3Aを成功させるペアが出るか?」という問いに対しては、技術の進化・女子の高回転ジャンプ普及・ペア競技の得点構造変化などが鍵となるでしょう。つまり、【得点妙味の有無】よりも【成功確率と構成バランス】がカギを握っているのです。

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