YouTubeなどで見かける「体操選手VSボディビルダー」といった企画では、吊り輪やロープクライムができないボディビルダーの姿が強調されることがあります。これを見て「本当にできないのか」「演出なのでは」と疑問を持つ人は少なくありません。本記事では、筋力の種類や競技特性の違いから、この現象を整理します。
筋肉量と運動能力は必ずしも比例しない
ボディビルやフィジークは、筋肥大と見た目の完成度を競う競技です。そのためトレーニングは高重量・中回数を中心に、特定の筋肉を効率よく発達させることに特化しています。
一方で、体操競技は自重を自在にコントロールする能力、関節の安定性、全身連動が不可欠です。筋肉が大きいこと自体が、そのまま有利に働くわけではありません。
体操競技に必要な「相対筋力」という概念
体操で重要なのは、筋力を体重で割った「相対筋力」です。体重が重くなるほど、同じ動作でも必要な出力は大きくなります。
筋量が多く体重も重いボディビルダーは、絶対的な筋力が高くても、自分の体を支える・引き上げる動作では不利になることがあります。
吊り輪がディップスの延長でできない理由
吊り輪はバーやディップスと異なり、不安定な支点を制御する能力が求められます。肩関節のインナーマッスル、体幹、神経系の協調動作が不足すると、筋力があっても成立しません。
ボディビルのディップスは「押す」動作が中心ですが、吊り輪では「安定させ続ける」能力が重要で、ここに大きな差が生まれます。
ロープ昇りは腕の筋肉だけでは成立しない
ロープ昇りを脚を使わずに行う動作は、広背筋や上腕だけでなく、握力持久力、体幹固定、肩甲骨操作が同時に要求されます。
高重量トレーニング中心の選手は、最大筋力は高くても、長時間自重を保持し続ける神経的・持久的能力を鍛えていない場合が多いのです。
YouTube企画は演出なのか
動画企画ではエンタメ性を高める編集はありますが、「わざとできない」ケースは稀です。実際、体操経験がなければ、トップレベルの筋力を持つ選手でも初見で成功するのは困難です。
これは能力の優劣ではなく、専門的に鍛えてきた運動様式の違いによるものです。
まとめ:できないのは不自然ではない
ボディビルダーやフィジーク選手が体操競技をうまくできないのは、筋力不足ではなく、競技特性とトレーニング目的の違いによるものです。体操は筋肉量よりも相対筋力と運動制御能力が支配的な競技であり、見た目の筋力から直感的に想像されるほど単純ではありません。競技ごとの身体の使い方を理解すると、動画で見た光景も自然に納得できるはずです。競技特性の違いについては[参照]。


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