国際スポーツ大会で台湾の代表チームが「チャイニーズタイペイ」と呼ばれていることに疑問を持つ人は多いでしょう。単に“台湾”と呼べないのはなぜなのか、その歴史的・政治的背景を整理して解説します。
「チャイニーズタイペイ」という名前の起源
台湾は中華民国(Republic of China、ROC)として1949年まで中華民国政府が中国全土を統治していましたが、中国内戦の結果、本土を中華人民共和国(PRC)が掌握しました。台湾にはROC政府が移り、両者がそれぞれ“中国”を主張する状態が続きます。
1970年代になると国際社会はPRCを「中国」の代表として認め始め、台湾(ROC)は国際機関での扱いが厳しくなりました。この流れで、オリンピックを含む多くの国際スポーツ大会で台湾が自国名を使えない問題が生じました【参照】。
IOCとの合意と国際大会への参加条件
1979年にIOC(国際オリンピック委員会)は、PRCを「中国オリンピック委員会」として承認し、台湾の組織は国際大会に参加するために“チャイニーズタイペイオリンピック委員会(Chinese Taipei Olympic Committee)”という名称を受け入れることを求めました。この合意は1981年の“ローザンヌ合意”として成立し、1984年のサラエボ冬季大会からこの名称が使われています【参照】。
この合意により、国旗や国歌も使用できず、台湾独自の国旗ではなく“プラム・ブロッサム・バナー”(オリンピック仕様の旗)が使われています。また演奏される音楽も台湾の国歌ではなく、オリンピック音楽が使用されることになりました【参照】。
「チャイニーズタイペイ」の意味とその曖昧さ
“Chinese Taipei”という名前は直訳すれば「中国の台北」や「中華的な台北」とも捉えられる曖昧な表現で、政治的な中立性を意図した妥協の結果でもあります。中国政府は「一つの中国」(One China)政策を強く主張し、台湾を中国の一部とみなしていますので、単に“Taiwan”や“Republic of China”という名称を公的な国際大会で使用することに強い反対をしてきました。
そのため、“Chinese Taipei”のような曖昧な名称を使うことで、大会主催者は政治的な緊張を避けながら台湾の参加を認める仕組みを選びました。
台湾国内での意見と感情
この名称は台湾内外で必ずしも歓迎されているわけではありません。多くの台湾人は自国名を誇りに思っており、“Taiwan”と呼ばれる方が望ましいと感じていますが、国際大会に出場するためには現状の名称を受け入れざるを得ないという現実もあります。2018年には“Taiwan”に名称を変更するかの国民投票が行われましたが、多くの選手や関係者が大会出場を優先して反対票が投じられ、変更は成立しませんでした【参照】。
こうした事情から、名前の意味や台湾人のアイデンティティについて議論が続いているのです。
まとめ:呼称の背景と理解のポイント
「チャイニーズタイペイ」という名称は台湾が国際大会に参加するための妥協策であり、政治的・歴史的背景が強く影響しています。台湾人の多くは“Taiwan”を望んでいるものの、国際機関のルールや中国との政治的関係により、現在もこの呼称が使われています。
名称に込められた歴史や政治的背景を理解することで、なぜ台湾チームが「チャイニーズタイペイ」と呼ばれているのかが見えてきます。


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