競泳水着に面積の規定はある?全裸で出場できない理由と高速水着が禁止された背景を解説

水泳

競泳を見ていると、選手によって水着の形や覆っている範囲が異なるため、「水着には最低・最大面積の規定があるのか」「極端に小さな水着や、逆に全身を覆う水着でも出場できるのか」と疑問に思うことがあります。

結論からいうと、競泳の国際ルールは水着について単純に「何平方センチメートル以上・以下」という面積で制限しているわけではありません。その代わり、身体のどこまで水着で覆えるか、素材、厚さ、浮力、構造などを細かく規定する方式が採用されています。

特に現在のルールが形成された背景を理解するうえで重要なのが、2008~2009年ごろに世界記録が相次いだ、いわゆる「高速水着」の時代です。ここではWorld Aquatics(旧FINA)の規定を中心に、競泳水着のルールを整理します。

競泳水着に「何平方センチメートル」という面積規定はある?

World Aquaticsの競泳用水着のルールでは、基本的に水着の面積そのものを平方センチメートルで指定する方式ではなく、身体を覆ってよい範囲を指定する方式になっています。

2010年から導入された規定では、男子の水着はへそより上まで、また膝より下まで延ばすことができません。女子については首を覆わず、肩より先まで延ばさず、膝より下まで延ばすことができません。この基本的な考え方は現在の競泳水着にもつながっています。

つまり「水着は最大○○平方センチメートル」という規則を設ける必要がなく、身体のどの位置まで覆えるのかを指定することで実質的に水着の形状を制限しています。World Aquaticsでは現行の競技規則と承認水着に関する情報も公開されています。[参照:World Aquatics Competition Regulations]

男子と女子では水着で覆える範囲が違う

プール競泳では、男子と女子で認められる水着の範囲が異なります。分かりやすく整理すると次のようになります。

区分 主な水着の範囲
男子 へそより上まで延ばせず、膝より下まで延ばせない
女子 首を覆えず、肩より先まで延ばせず、膝より下まで延ばせない

したがって、男子選手が肩から足首までを覆う全身型の競泳水着を着たり、女子選手が首から足首まで覆う水着を着たりすることは、現在の通常のプール競泳の規定には適合しません。

なお、オープンウォータースイミングはプール競泳とは事情が異なり、水温などとの関係でウェットスーツに関する別の規定もあります。そのため「水泳競技ならすべて同じ水着規定」と考えず、競技種目ごとに確認する必要があります。

では全裸で競泳大会に出場することはできる?

「覆ってよい最大範囲が決まっているだけなら、逆に何も着用しなくてもいいのでは」と考えることもできますが、公式競技はそもそも競技者が規定に適合する水着を着用することを前提として運営されています。

World Aquaticsでは競技用水着について承認制度を設けており、競技規則では水着の素材や構造などについても条件が定められています。したがって、「水着を着用しない」という選択肢を、単に面積がゼロの水着として扱うことはできません。

これはテレビ放送やスポンサーの都合によって初めて成立するルールというより、競技規則として水着が競技用具の一つに位置付けられていると理解すると分かりやすいでしょう。World Aquaticsは競技に使用できる承認済み水着についてもリストを公開しています。[参照:World Aquatics Approved Swimwear]

水着は面積以外にもかなり細かく規制されている

競泳水着の規制で重要なのは、覆う面積だけではありません。2009年にFINAが発表した2010年以降の承認基準では、素材を繊維素材に限定することに加え、厚さ、浮力、透水性、構造などについて具体的な基準が示されました。

当時発表された基準では、素材の最大厚さは0.8mm、水着による浮力効果は0.5ニュートン以下とされ、透水性についても測定基準が設けられました。また、ジッパーなどの留め具や、身体に外部刺激を与える仕組みなども認めない方針が示されています。[参照:FINA Bureau Meeting 2009]

つまり競泳水着は単なる服装ではなく、タイムに影響を及ぼし得る競技用具として管理されています。水着メーカーが好きな素材や形状で自由に製品を作り、それをそのまま世界大会で使用できるわけではありません。

昔の「サメ肌水着」「高速水着」はなぜ面積が大きかった?

2000年代には、現在より広い範囲を覆う競泳水着が珍しくありませんでした。「サメ肌水着」と呼ばれたタイプや、その後登場した全身型・高速水着を覚えている人なら、現在の競泳水着との違いを実感しやすいでしょう。

特に2008~2009年ごろには、水着メーカー各社が水中抵抗の低減だけでなく、身体の圧縮や水着の素材・構造などを競い合いました。水着が競技結果に及ぼす影響が非常に大きくなり、競泳界では水着をどこまで「選手の装備」として認めるのかが大きな問題になりました。

FINAは2009年に水着メーカーなどと規制について協議し、最終的に2010年から繊維素材を基本とする新しいルールへ移行しました。[参照:FINA Bureau Meeting]

高速水着が禁止された本質的な理由

高速水着問題で重要なのは、「肌を覆う面積が大きすぎたから禁止された」と単純化しないことです。問題の中心にあったのは、水着の素材や構造が浮力や抵抗などに影響し、競技能力を補助する度合いが大きくなったことでした。

FINAは当時、水着の浮力や厚さ、空気・水を閉じ込める構造などを検証し、多数の水着を審査しています。2009年5月の審査では348着が検討され、浮力や厚さの試験を通過できず却下されたモデルや、空気・水を閉じ込める効果に関する条件を満たすため修正を求められたモデルもありました。[参照:FINA Commission for Swimwear Approval]

その結果として、素材と性能を制限すると同時に、水着が身体を覆える範囲にも明確な境界が設定されました。現在の男子選手に膝上までの「ジャマー」タイプが多いのも、このルールと深く関係しています。

小さければ小さいほど有利というわけでもない

規則上の疑問とは別に、競技性能だけを考えても「できるだけ肌を出せば速い」とは限りません。現代の競泳水着には身体を適切に圧迫して姿勢を支えたり、水中での抵抗を抑えたりすることが期待されています。

そのためトップ選手は、単純に布面積の少ない水着ではなく、ルールの範囲内で自分の体格、種目、泳ぎ方に適した競技用水着を選択します。

反対に身体を広く覆えば必ず速くなるわけでもありません。現在は素材や構造そのものが規制されているため、2009年当時の高速水着と同じ発想で全身を覆うことはできません。

スポンサーやテレビ放送が水着規定を決めているのか

競泳では水着メーカーが選手や競技団体の重要なパートナーになることがありますが、国際競技における水着の技術的なルールはWorld Aquaticsによって定められています。

メーカーは競技規則に合わせて製品を開発し、必要な承認手続きを経ます。World Aquaticsの承認制度では、申請された水着について技術情報やサンプルを用いた審査が行われています。

したがって、テレビで放送できるか、スポンサーが付くかという商業的な事情だけから現在の水着の形が決まっているわけではありません。公平な競争を保ち、選手自身の能力が結果の中心になるよう、競技用具として水着を規制することが大きな目的です。

まとめ:競泳水着は「面積」ではなく範囲・素材・性能まで規制される

競泳水着には「○平方センチメートル以上、○平方センチメートル以下」という単純な面積規定があるわけではありません。代わりに、男子はへそや膝、女子は首・肩・膝といった身体上の位置を基準として、水着が覆える範囲が決められています。

さらに素材、厚さ、浮力、透水性、構造などにも条件があり、国際大会では承認された競泳水着を使用する仕組みがあります。このため全裸を「面積ゼロの水着」と解釈して公式競技に出場することもできません。

かつてのサメ肌水着や高速水着が現在より広い範囲を覆っていたのは、水着に関するルールが現在とは異なっていたためです。2009年前後の高速水着問題を契機として、水着そのものが選手の能力を過度に補助しないよう規制が大幅に見直されました。現在の競泳水着の形には、競技の公平性と技術革新のバランスを取ってきた歴史が反映されています。

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