2026-27シーズンのフィギュアスケートでは、シングルのフリースケーティングに大きなルール変更が入りました。ジャンプエレメンツは従来より減って最大6枠となり、ジャンプの反復についても新しい規定が導入されています。
特に分かりにくいのが、ISUルールに新しく記載された「同じ種類のジャンプは回転数にかかわらず3回まで」という規定です。この文章だけ読むと、ルッツであれば3Lzを3回、トウループであれば3Tを3回跳べるようになったようにも見えます。
しかし、ISUの2026年6月12日施行ルールを最後まで読むと、3Lzを3回跳ぶことはできません。「同じ種類は3回まで」という規定とは別に、「同一の3回転・4回転・5回転ジャンプは2回を超えて試みることができない」という制限が併存しているためです。[参照:ISU Sports Rules Figure Skating 2026]
- 2026-27シーズンの女子フリーはジャンプ6エレメンツ
- 「同じ種類のジャンプは3回まで」の本当の意味
- 3Lzを3回跳べない決定的な規定
- なぜ4T・4T・3Tは可能でも3Lz・3Lz・3Lzは不可能なのか
- 3Lzと4Lzはルール上は別のジャンプとして扱われる
- 3Lzを3回にした場合、3回目は得点対象にならない
- もう一つ重要な「繰り返せる高難度ジャンプは2種類まで」という制限
- 提示された構成は3Lzが3回なので実施不可
- 3Lz-Eu-3F-3Loという4つに見えるコンビネーションは可能?
- 2026-27ではEuler自体に基礎点が付かない
- 3Aなし女子なら3Lzと3Fを2回ずつ使う形は有力
- ルール上成立する構成例
- ダブルジャンプにも別の上限がある
- ジャンプ反復ルールを3段階で確認すると間違えにくい
- 「同じ記号が3回まで」ではなく「同じジャンプ系統が3回まで」と考える
- 旧ルールとの違いは「回転数を変えて逃げる」構成も制限されたこと
- 後半ボーナスは最後の3ジャンプエレメンツ
- 公式ルールを確認するならRule 612の「Repetitions」を見る
- まとめ:3Lzを3回は不可。「3回まで」は回転数違いを合算する上限
2026-27シーズンの女子フリーはジャンプ6エレメンツ
まず大きな変更として、シニア女子のフリースケーティングで認められるジャンプエレメンツは最大6つです。ISU Rule 612には、女子のWell-Balanced Programについて「maximum of six jump elements」と明記されています。
さらに、その6エレメンツのうち少なくとも1つはアクセル系ジャンプでなければなりません。したがって3Aを持たない女子選手の場合でも、2Aなどを最低1つ組み込む必要があります。
ここでいう1エレメントとはジャンプ1個という意味ではありません。例えば「3Lz+3T」は2個のジャンプを含みますが、ジャンプコンビネーション全体で1エレメントとしてジャンプ枠を1つ使用します。
「同じ種類のジャンプは3回まで」の本当の意味
2026-27ルールの反復規定には、同じ種類のジャンプは回転数にかかわらずフリー全体で3回までという新しい制限があります。
ここでいう「種類」は、Lutz、Flip、Loop、Salchow、Toe Loop、Axelというジャンプの系統を指します。つまり4T、3T、2Tはいずれもトウループという同じ種類として数えます。
したがって例えば「4T、4T、3T」ならトウループ系は合計3回です。しかし「4T、4T、3T、2T」ならトウループ系を4回実施するため、この新しい上限に抵触します。
3Lzを3回跳べない決定的な規定
重要なのは、その直後に別の制限が書かれていることです。ISU Rule 612のRepetitionsには「No triple jump or quadruple jump or quint jump can be attempted more than twice」と規定されています。
つまり、同一の3回転ジャンプは最大2回です。3Lzは同一の3回転ルッツなので、3回目の3Lzを入れることはできません。
したがって「3Lzを3回」という構成は、2026-27シーズンでも不可です。「同じ種類を3回まで」という新ルールは、同一ジャンプを3回まで許可した規定ではなく、回転数が違うジャンプまで合算して同じ系統を最大3回に制限する規定です。
なぜ4T・4T・3Tは可能でも3Lz・3Lz・3Lzは不可能なのか
ここを具体例で整理すると新ルールが非常に分かりやすくなります。
| 構成 | 可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 4T・4T・3T | 可能 | トウループ系は3回、4Tは2回まで |
| 4T・3T・2T | 可能 | 同じトウループ系が合計3回 |
| 4T・4T・3T・2T | 不可 | トウループ系が合計4回になる |
| 3Lz・3Lz | 可能 | 同一3回転ジャンプの上限2回以内 |
| 3Lz・3Lz・2Lz | 可能 | ルッツ系3回、3Lzは2回 |
| 3Lz・3Lz・3Lz | 不可 | 同一の3回転ジャンプを3回試みることになる |
つまり「種類3回」と「同一の3回転は2回」という2つのルールを同時に満たす必要があります。
3Lzと4Lzはルール上は別のジャンプとして扱われる
さらにISUルールには、同じ名前の3回転と4回転・5回転について、それぞれ異なるジャンプとして扱う旨も記載されています。
例えば3Lzと4Lzはどちらも「ルッツ系」ではありますが、反復ルール上の同一ジャンプではありません。そのため理論上は4Lzを1回、3Lzを2回という構成が可能です。
この場合、ルッツという「種類」は合計3回で上限以内、3Lzという具体的ジャンプも2回で上限以内、4Lzは1回なので問題ありません。これこそ「同じ種類を回転数に関係なく3回まで」という新規定が必要になった理由を理解しやすい例です。
3Lzを3回にした場合、3回目は得点対象にならない
規定を超えてジャンプを実施しても、プログラム自体がそこで失格になるわけではありません。
ISUルールでは、余分なジャンプについて規定を満たしていない個別ジャンプには価値が与えられず、実施順に判定するとされています。そのため3Lzをすでに2回実施した後に3回目の3Lzを跳んでも、正常な3Lzとして基礎点を得ることはできません。
高難度ジャンプをわざわざ無価値にしてしまうことになるため、実戦構成として採用するメリットはありません。
もう一つ重要な「繰り返せる高難度ジャンプは2種類まで」という制限
2026-27ルールでは、3回転以上の反復にもう一段階制限があります。
ISU Rule 612では、3回転・4回転・5回転ジャンプの中で、2回実施できるジャンプは合計2種類までと定められています。また、その2種類のうち4回転または5回転を反復できるのは1種類だけです。
女子で3回転だけを考える場合、例えば3Lzを2回、3Fを2回とすることは可能です。しかしさらに3Loまで2回入れると、反復している3回転ジャンプが3種類になり、規定を超えます。
提示された構成は3Lzが3回なので実施不可
例として挙げられる次の構成を確認してみます。
3Lz-Eu-3F-3Lo / 3Lz-3T / 3Lz / 3F / 3S / 2A
ジャンプエレメンツ自体は6つなので、2026-27シーズンの最大6枠という条件には収まっています。また2Aが含まれるため、アクセル系ジャンプ必須という条件も満たしています。
しかし3Lzが、1つ目のコンビネーション、2つ目のコンビネーション、単独ジャンプの合計3回入っています。同じ3回転ルッツを3回試みているため、この部分が反復規定に抵触します。
3Lz-Eu-3F-3Loという4つに見えるコンビネーションは可能?
この部分については、新ルールでは考え方が少し特殊です。
2026-27シーズンのRule 610では、Euler(旧称half-loop)は2つのlisted jumpの間で使用した場合「non-listed jump」と扱われ、基礎点を持たず、コンビネーションに含められるジャンプ数にもカウントされません。
そのため表記上「3Lz-Eu-3F-3Lo」と4回跳んでいるように見えても、ルール上のlisted jumpは3Lz、3F、3Loの3つです。3ジャンプコンビネーションとして扱うことができます。Eulerはフリーで1回だけ使用可能です。[参照:Rule 610]
2026-27ではEuler自体に基礎点が付かない
従来の採点を知っている人ほど注意したい変更点です。
Rule 610では、コンビネーションのlisted jump間に使われるEulerはnon-listed jumpとされ、「it will have no value」と明記されています。
つまり3Lz-Eu-3Fのような構成では、Eulerそのものの基礎点を上乗せするのではなく、左右のジャンプを接続する役割として扱われます。
3Aなし女子なら3Lzと3Fを2回ずつ使う形は有力
3Aや4回転を持たない女子選手が基礎点を高める場合、基礎点の高い3Lzと3Fをそれぞれ2回使用する考え方は依然として非常に有力です。
3Lzと3Fをそれぞれ2回入れれば、「2回実施できる3回転ジャンプは2種類まで」という反復枠を両方使うことになります。そのため3Lo、3S、3Tなどは各1回までになります。
この考え方を基準にすると、提示された構成で問題なのはコンビネーションそのものではなく、3Lzを3回目まで入れている点だと分かります。
ルール上成立する構成例
例えば3A・4回転を使用しない女子で、次のような6ジャンプエレメンツは反復規定上成立します。
3Lz-Eu-3F-3Lo / 3Lz-3T / 3F / 3S / 2A / 2A
この場合、3Lzは2回、3Fも2回で、反復する3回転ジャンプはこの2種類だけです。3Lo、3T、3Sは各1回です。また2Aはダブルジャンプなので2回まで使用でき、アクセル系必須条件も満たします。
もちろん実際の「最高構成」は後半ボーナスの配置、各ジャンプの成功率、GOE、エッジ判定、コンビネーション成功率などによって変わります。基礎点だけを最大化した構成が競技上もっとも得点期待値の高い構成とは限りません。
ダブルジャンプにも別の上限がある
ダブルジャンプについても自由に何回でも使用できるわけではありません。
2026-27ルールでは2Aを含むすべてのダブルジャンプについて、同じダブルジャンプをフリーで2回を超えて入れることはできません。単独ジャンプでもコンビネーション内でも合算されます。
例えば2Aを2回使うことはできますが、3回目の2Aは不可です。この規定と「同じ種類は合計3回まで」という規定を両方確認する必要があります。
ジャンプ反復ルールを3段階で確認すると間違えにくい
2026-27シーズンの構成を作るときは、次の3段階でチェックすると理解しやすくなります。
| チェック項目 | 2026-27の主な制限 |
|---|---|
| ジャンプの種類 | 回転数を問わず同じ種類は合計3回まで |
| 同一の3回転以上 | 同じ3回転・4回転・5回転は最大2回 |
| 3回転以上の反復枠 | 2回実施できるジャンプは最大2種類 |
| ダブルジャンプ | 同一ダブルは最大2回 |
| ジャンプエレメンツ | 女子フリーは最大6枠 |
「種類3回まで」だけを切り取って読むと3Lz×3ができそうに見えますが、その下にある同一ジャンプ2回までという規定によって禁止されます。
「同じ記号が3回まで」ではなく「同じジャンプ系統が3回まで」と考える
日本語で理解するときに、「同じ記号が3回まで」と表現すると誤解しやすくなります。
ISU原文は「The same type of jump independent of the number of revolutions」としています。つまり3Lzという記号そのものを3回使えるという意味ではなく、Lutzというtake-off typeを回転数をまたいで数える規定です。
例えば3Lzと2Lzを組み合わせても、どちらもLutz typeとして総数へカウントされます。逆に3Lzと3Fは異なるジャンプタイプです。
旧ルールとの違いは「回転数を変えて逃げる」構成も制限されたこと
新しい規定の意図を理解するには、同じ系統のジャンプを回転数だけ変えて多数組み込むケースを考えると分かりやすくなります。
例えばトウループを4T、4T、3T、2Tというように複数の回転数で使用すると、それぞれ個別のジャンプだけを見れば反復制限を回避できるように見えます。
しかし2026-27からはトウループ系全体で最大3回なので、このような4回使用は不可能です。新ルールは「同一ジャンプを3回まで緩和した」のではなく、むしろ同一take-offのジャンプを回転数違いで大量使用することへ新たな上限を設けたと理解するほうが正確です。
後半ボーナスは最後の3ジャンプエレメンツ
ジャンプ構成を考える際には後半ボーナスも重要です。
2026-27ルールでは、フリースケーティングの後半に開始したジャンプエレメンツのうち、最後の3つが1.1倍の基礎点対象となります。
そのため3Lzや3Fなど高基礎点ジャンプをどこへ配置するかによって、同じ6エレメンツでも予定基礎点が変わります。ただし後半に難しいジャンプを集中させれば転倒や回転不足のリスクも増えるため、実戦では選手ごとの成功率を考える必要があります。
公式ルールを確認するならRule 612の「Repetitions」を見る
この問題についてルールブック内で探す場合は、Rule 612 Free Skating Singlesの中にある「Repetitions」の項目を確認すると答えがまとまっています。
同項目には、同じジャンプタイプは回転数にかかわらず3回まで、同じダブルジャンプは2回まで、3回転以上で2回実施できるものは2種類まで、そして同一の3回転以上は2回を超えて試みられないという規定が連続して記載されています。
ISU公式サイトでは2026年6月12日施行のFigure Skating Sports Rulesが現行規則として公開されています。[参照:ISU Regulations]
まとめ:3Lzを3回は不可。「3回まで」は回転数違いを合算する上限
2026-27シーズンから導入された「同じ種類のジャンプは回転数にかかわらず3回まで」という規定によって、3Lzを3回跳べるようになったわけではありません。
ISU Rule 612には同時に、同じ3回転・4回転・5回転ジャンプは2回を超えて試みることができないと明記されています。したがって3Lzは最大2回です。[参照:ISU Rule 612]
新しい「3回まで」の意味は、例えば4T+4T+3Tのように回転数が異なっていても、トウループという同じ種類を合計3回までにするという制限です。3Lz+3Lz+3Lzを許可する規定ではありません。
そのため、3Aを持たない女子の例として「3Lz-Eu-3F-3Lo/3Lz-3T/3Lz/3F/3S/2A」と組むと、3回目の3Lzが反復規定に抵触します。一方、「3Lz-Eu-3F-3Lo/3Lz-3T/3F/3S/2A/2A」のようにすれば、3Lzと3Fをそれぞれ2回使いながら6ジャンプエレメンツに収めることができます。
2026-27の反復規定は一文だけで判断すると誤解しやすいため、「同じ種類は合計3回まで」「同一の3回転以上は2回まで」「2回繰り返せる3回転以上は2種類まで」という3つをセットで確認することがポイントです。

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