MLBでは、再建途中の球団で台頭した優秀なリリーフ投手が、数年後にプレーオフを狙う球団へトレードされるケースが珍しくありません。2025年にアスレチックスからパドレスへ移籍したメイソン・ミラーは、その代表例の一つです。
そのため、エンゼルスの剛腕ベン・ジョイスについても「いずれ強豪へ移籍するのでは」と考えるのは自然です。ただし、ジョイスが数年後に強豪へ移る可能性は十分あるものの、現時点でミラーと同じ道をたどると予想するのは早いでしょう。
最大の理由は、ジョイスには2030年まで球団保有権が見込まれており、エンゼルス側に急いで放出する必要がないことです。一方で肩の故障歴があり、今後どこまで安定して登板できるかによってトレード価値が大きく変わります。ここではメイソン・ミラーの移籍経緯と比較しながら、ジョイスが将来的に強豪へ移籍する可能性を整理します。
- メイソン・ミラーはなぜアスレチックスからパドレスへ移籍したのか
- ミラーはパドレスでも強力なクローザーになっている
- ベン・ジョイスも「強豪が欲しがるタイプ」の投手
- 2026年のジョイスは故障から復帰して好投している
- ただしミラーとの最大の違いは「耐久性」
- ジョイスは2030年までエンゼルスが保有できる見込み
- むしろFA直前より「球団保有期間が残っている時」の方が高く売れる
- ジョイスも2027~2029年ごろにトレード候補になる可能性はある
- ただしエンゼルスが強くなれば移籍させる理由はない
- リリーフ投手はトレード期限で特に需要が高い
- ミラーとジョイスを比較するとどうなる?
- ジョイスの価値を最も大きく左右するのは球速より登板数
- 肩手術からの復帰後に球威が戻っていることは明るい材料
- ジョイスを今すぐ売る可能性が低い理由
- もし大型トレードになるならどんな条件?
- 移籍先はパドレスのような強豪になるとは限らない
- FAまでエンゼルスに残る可能性も十分ある
- 現時点での将来予想
- まとめ|ジョイスの強豪移籍は十分あり得るが、ミラーと同じ展開になるとは限らない
メイソン・ミラーはなぜアスレチックスからパドレスへ移籍したのか
メイソン・ミラーは2025年7月31日のトレード期限に、左腕JP・シアーズとともにアスレチックスからパドレスへ移籍しました。
このトレードでアスレチックスが獲得したのは、当時MLB Pipeline全体3位の超有望株だったレオ・デブリーズを筆頭に、ブレイデン・ネット、ヘンリー・バエズ、エドゥアルニエル・ヌニェスという若手4人です。[参照:MLB公式・ミラーのトレード]
つまりアスレチックスは「ミラーが不要だったから売った」のではありません。ミラーは長期間球団が保有できるスター級クローザーだったため、パドレスが非常に大きな対価を提示したことでトレードが成立しました。
ミラーはパドレスでも強力なクローザーになっている
パドレス移籍後もミラーは高い能力を示しており、2026年8月23日時点ではシーズン32セーブを記録しています。8月22日のツインズ戦でも最終回を締めています。
8月25日のパイレーツ戦ではオニール・クルーズに本塁打を許しましたが、これはミラーが1年以上ぶりに許した本塁打でした。極端な球速だけではなく、長期間にわたって長打を抑えられる投手になっていることが分かります。[参照:Reuters]
パドレスのようにポストシーズン進出を狙うチームにとって、終盤を任せられる圧倒的な救援投手は非常に価値があります。
ベン・ジョイスも「強豪が欲しがるタイプ」の投手
ジョイスにもミラーと似ている部分があります。最大の魅力は圧倒的な球速です。
ジョイスの速球は過去に105.5mph(約169.8km/h)を記録しています。さらに単純なフォーシームだけでなく、本人が「スプリンカー」と呼ぶ強い沈み方をする球やスライダーなども持っています。[参照:MLB公式]
健康であれば、短期決戦で1イニングを任せるには非常に魅力的です。特にプレーオフでは先発投手から強力なリリーフ陣へつなぐ戦略が重要になるため、ジョイスのような投手は強豪球団から評価されやすいタイプです。
2026年のジョイスは故障から復帰して好投している
ジョイスを評価するうえで重要なのが2026年の復帰です。ジョイスは2025年に右肩の関節唇を修復する手術を受け、長期離脱しました。
リハビリを経て2026年8月4日に60日間の負傷者リストから復帰。8月25日終了時点では8試合、7回2/3を投げて自責点0、12奪三振、3セーブを記録しています。[参照:Baseball Reference]
復帰直後としては非常に良い内容です。エンゼルスも復帰当初から高いレバレッジの場面で起用し、状態を見ながらクローザーへ戻していく方針を示していました。[参照:MLB公式]
ただしミラーとの最大の違いは「耐久性」
ジョイスについて最も大きな不確定要素は肩です。
2024年には34回2/3を投げて防御率2.08と好成績を残しましたが、2025年はわずか4回1/3の登板後に肩を痛め、その後手術を受けています。2026年も復帰まで長期間を要しました。
100mphを大きく超えるボールは魅力ですが、MLB球団がトレードで大型の対価を出す際には「どれほど速いか」だけでなく、年間50~60試合程度を継続して投げられるかも重要になります。
そのため現在のジョイスは、「健康なら強豪が非常に欲しがる投手」である一方、「大型トレードを成立させるほど耐久性が証明されたか」という点ではまだ判断材料が少ない状態です。
ジョイスは2030年までエンゼルスが保有できる見込み
ジョイスの将来を予想するうえで非常に重要なのが契約状況です。
Baseball Referenceでは、2026年時点のジョイスはPre-Arbitration Eligible、つまり本格的な年俸調停前の選手として掲載されています。2027年から年俸調停資格を得る見込みで、フリーエージェントになるのは2030年の予定です。[参照:Baseball Reference]
| 項目 | ベン・ジョイス |
|---|---|
| 生年月日 | 2000年9月17日 |
| 所属 | ロサンゼルス・エンゼルス |
| ポジション | 右投げリリーフ |
| MLBデビュー | 2023年5月29日 |
| 年俸調停資格 | 2027年見込み |
| FA | 2030年見込み |
つまり、ジョイス自身が近いうちに自由に移籍先を選べる状況ではありません。数年以内にエンゼルスを離れるなら、FAではなくトレードになる可能性が高いでしょう。
むしろFA直前より「球団保有期間が残っている時」の方が高く売れる
ここがMLBのトレードを理解する重要なポイントです。
一般的に優秀な選手は、FAまで残り数か月になってから売るより、複数年の球団保有期間が残っている状態でトレードした方が大きな対価を得やすくなります。
獲得球団からすれば、2029年終了後にFAになる投手を2029年7月に獲得するより、2027年や2028年に獲得して複数シーズン使える方が価値があります。
ミラーのトレードがまさにこの例です。アスレチックスはミラーを急いで売る必要がありませんでしたが、長期間保有できるエリートクローザーだったからこそ、パドレスからMLB全体トップクラスの有望株を含む大型パッケージを獲得できました。
ジョイスも2027~2029年ごろにトレード候補になる可能性はある
ジョイスが今後健康を維持してクローザーとして定着した場合、エンゼルスのチーム状況次第では2027~2029年にトレード候補として名前が挙がる可能性があります。
例えばエンゼルスがトレード期限時点でポストシーズン争いから離れていて、ジョイスが防御率2点台以下で100mph超の速球を投げ続けていた場合を考えてみます。
優勝争いをする球団にとっては「試合終盤を任せられて、しかも翌年以降も保有できるリリーフ」です。その場合、複数の有望株を提示するチームが出てくる可能性があります。
個人的に最も現実的なのは、ジョイスが健康な状態で実績を積み、エンゼルスが再建または売り手になるタイミングで強豪へトレードされるケースです。
ただしエンゼルスが強くなれば移籍させる理由はない
反対に、今後エンゼルスがポストシーズンを狙えるチームになれば、ジョイスを放出する必要はありません。
クローザー候補として機能する20代の投手を比較的安い年俸で保有できることは、競争するチームにとって非常に大きなメリットです。
その場合はジョイス自身が「強いチームへ移る」のではなく、エンゼルスが強いチームになった状態で重要なブルペン投手として残る可能性があります。
リリーフ投手はトレード期限で特に需要が高い
ジョイスが将来的に移籍すると予想できる理由の一つは、リリーフ投手というポジションそのものです。
優勝を狙う球団は毎年7月のトレード期限にブルペン強化を必要とします。短期決戦では、先発投手が5~6回まで投げ、そこから複数の強力なリリーフで逃げ切る戦い方が非常に重要だからです。
特にジョイスのように三振を取れる投手は、ランナーを置いた危険な場面でも使いやすくなります。多少高い対価を払ってでも獲得したい球団が現れる可能性があります。
ミラーとジョイスを比較するとどうなる?
| 比較 | メイソン・ミラー | ベン・ジョイス |
|---|---|---|
| 最大の武器 | 圧倒的球速+高い奪三振能力 | 105mph級の圧倒的球速 |
| 役割 | クローザーとして確立 | クローザー候補 |
| 移籍 | 2025年にA’sからパドレス | 2026年現在エンゼルス |
| 大型トレード価値 | すでに証明済み | 今後の健康状態次第 |
| 主な不安材料 | リリーフというポジション特有の変動 | 右肩手術歴と耐久性 |
| 強豪への将来移籍 | すでに実現 | 十分あり得るが未確定 |
球速という分かりやすい共通点はありますが、現時点ではミラーの方がトレード時の実績と信頼性で上でした。
ジョイスが今後1~2年間フルシーズン投げ、年間50試合以上をこなしながらクローザー級の成績を残せれば、両者の評価はかなり近づいてくるでしょう。
ジョイスの価値を最も大きく左右するのは球速より登板数
ジョイスの場合、今後注目したい数字は最高球速だけではありません。
105mphを投げられることはすでに証明しています。これから重要になるのは、50試合、60試合というシーズンを健康に完走できるかです。
例えば2027年に55~60試合へ登板し、防御率2点台前半、奪三振率も高水準という成績を残した場合、ジョイスのトレード価値は急激に上昇する可能性があります。
逆に肩の炎症によるIL入りを繰り返せば、どれだけ球速が速くても獲得側は大型の有望株を出しにくくなります。
肩手術からの復帰後に球威が戻っていることは明るい材料
一方で2026年復帰後の内容は明るい材料です。
MLB公式も8月13日に「Joyce back to flamethrowing ways after recovering from shoulder surgery」として、肩手術から戻ったジョイスが再び剛速球を投げていることを取り上げています。[参照:MLB・Angels公式ニュース]
さらに8月12日、15日、18日にはセーブを記録。8月25日には1回を無安打、3奪三振で抑えています。
少なくとも「手術によって以前の球威を完全に失った」という状態ではなく、健康なら再びエンゼルスの勝ちパターンを任せられる可能性を示しています。
ジョイスを今すぐ売る可能性が低い理由
現在のジョイスをすぐトレードする場合、エンゼルス側にもリスクがあります。
肩の手術から復帰したばかりなので、他球団は耐久性を理由に評価を割り引く可能性があります。その状態で売れば、健康なシーズンを1年間完走した後より交換価値が低くなるかもしれません。
さらに2030年まで球団保有権が見込まれるため、エンゼルスには時間があります。急いで安く売却する合理性はあまりありません。
したがって今後しばらくは、エンゼルスがジョイスをクローザー候補として使いながら健康状態を見る展開の方が自然です。
もし大型トレードになるならどんな条件?
ジョイスがミラーのような大型トレードになるには、いくつかの条件がそろう必要があります。
- 肩の故障を再発せずフルシーズン登板する
- 100mph超の球速を維持する
- 四球を抑えて安定して三振を取る
- クローザーとして実績を積む
- FAまで複数年の球団保有期間が残っている
- エンゼルスがトレード期限時点で売り手になる
- 優勝候補から有力な若手を含むオファーが来る
この条件が重なると、エンゼルスにとって「ジョイスを残す価値」と「有望株へ変える価値」を比較する状況が生まれます。
移籍先はパドレスのような強豪になるとは限らない
仮にジョイスがトレードされたとしても、必ずドジャース、ヤンキース、パドレスなど現在の有名強豪へ行くとは限りません。
MLBの戦力図は数年で大きく変化します。2028年や2029年に優勝争いをしている球団が現在と同じとは限らないためです。
より正確には「ジョイスが優秀なクローザーになり、エンゼルスが売り手になった場合、その時点の優勝候補へ移籍する可能性が高まる」と考えるべきでしょう。
FAまでエンゼルスに残る可能性も十分ある
もちろんトレードされず2030年までエンゼルスでプレーするシナリオもあります。
エンゼルスがジョイスを長期的なブルペンの柱と考えれば、そのまま保有できます。さらに両者が契約延長を結べば2030年以降もエンゼルスに残る可能性があります。
そのため現時点で「数年後には確実に別球団」と断言できる要素はありません。
現時点での将来予想
2026年8月時点の状況だけで将来を予想するなら、ジョイスについては次のように考えるのが現実的です。
| シナリオ | 可能性の考え方 |
|---|---|
| 近いうちに即トレード | 低め。復帰直後で球団保有期間も長い |
| 2027~2029年に強豪へトレード | 十分あり得る。健康とチーム状況次第 |
| 2030年ごろまでエンゼルス | 十分あり得る |
| ミラー級の大型トレード | 健康なフルシーズンを重ねれば可能性あり |
| 故障によって価値低下 | 肩手術歴があるため無視できない |
特に2027年シーズンは重要です。肩手術から完全復活し、年間を通して高いパフォーマンスを維持できるかによって、ジョイスのキャリアの見え方が大きく変わります。
まとめ|ジョイスの強豪移籍は十分あり得るが、ミラーと同じ展開になるとは限らない
ベン・ジョイスが数年後にエンゼルスから強豪チームへ移籍する展開は、MLBのトレード市場を考えれば十分にあり得ます。
メイソン・ミラーは2025年にアスレチックスからパドレスへ移籍し、その対価としてアスレチックスはMLB全体3位だったレオ・デブリーズを含む大型の有望株パッケージを獲得しました。[参照:MLB公式]
ジョイスにも105.5mphを記録した圧倒的な球速があり、健康ならポストシーズンを狙う球団が欲しがる能力を備えています。2025年の肩手術から2026年8月4日に復帰し、8月25日終了時点では7回2/3で自責点0、12奪三振、3セーブと好スタートを切っています。[参照:Baseball Reference]
ただしジョイスは2030年までエンゼルスが保有できる見込みで、2027年から年俸調停資格を得る段階です。そのため現在のエンゼルスに「今すぐ売らなければならない」という事情はありません。
将来的なトレードの最大の分岐点は、ジョイスが肩の故障を克服して1~2シーズン安定して投げられるか、そしてその時点でエンゼルスが優勝を狙える位置にいるかです。
ジョイスが健康なままクローザーとして成長し、その一方でエンゼルスがトレード期限に売り手となれば、2027~2029年ごろに優勝候補へ移籍するシナリオはかなり現実味を帯びます。逆にエンゼルス自身が強くなれば、安価に保有できる剛腕クローザーをわざわざ手放す理由はありません。
したがって「ミラーのように弱いチームから強いチームへ出て大活躍するジョイス」という未来は十分想像できますが、現段階では移籍そのものより、まず2027年に年間を通して投げられるかを見ることが重要です。そこをクリアすれば、ジョイスは将来的にMLBのトレード期限でかなり注目される投手になる可能性があります。


コメント