エンソ・フェルナンデスは、サッカーをよく見る人ほど「結局どのポジションの選手なのか分かりにくい」と感じやすいタイプのMFです。ボランチの位置からゲームを組み立てることもできれば、8番として前後に動き、さらに高い位置ではペナルティーエリアへ飛び込んで得点することもできます。
一言で表すなら、エンソは「ゲームメーカー型の万能セントラルMF」で、基本的には8番と6番の中間に位置する選手です。守備専門のアンカーでも、ドリブル主体の攻撃的MFでもなく、パスによって試合を動かしながら必要に応じて前線へ進出するのが特徴です。
近年のチェルシーでは得点力まで大きく伸びており、2025-26シーズンは公式戦54試合で15得点7アシストを記録しました。かつての「後方からゲームを作る選手」というイメージだけでは説明できないほどプレー領域が広がっています。[参照:チェルシー公式]
- エンソ・フェルナンデスの基本ポジションはセントラルMF
- 6番・8番・10番の違いから見るエンソ
- 最大の武器はパスによるゲームメイク
- ベンフィカ時代は「司令塔型ボランチ」に近かった
- アルゼンチン代表では低い位置から試合を作る
- 近年は「ボックスへ入る8番」として大きく進化
- なぜエンソはゴールを取れるようになったのか
- エンソはボックス・トゥ・ボックスなのか?
- ドリブルで何人も抜くタイプではない
- 守備ではどんな選手?
- カイセドとのコンビがエンソを理解するヒント
- エンソの弱点はスピードと広大なスペースの守備
- 歴代選手ならトニ・クロースに近い部分がある
- チアゴ・アルカンタラにも似ている
- モドリッチとは似ている?
- ヴェラッティとの共通点もある
- ランパードに似ているという見方はどう?
- 一人の歴代選手に当てはめるのが難しい
- ピルロ型のレジスタとは何が違う?
- デ・ブライネ型とも少し違う
- エンソを最も生かしやすい配置
- 試合を見るときはエンソの「ボールを持っていない動き」に注目
- エンソは「何でもできるからポジションが分かりにくい」選手
- まとめ|エンソは「クロース系の司令塔+攻撃的8番」のハイブリッド
エンソ・フェルナンデスの基本ポジションはセントラルMF
エンソの本来のポジションは中央のMFです。チェルシー公式プロフィールでも、リーベル・プレートの育成年代から一貫してセントラルMFとして育った選手と紹介されています。[参照:チェルシー公式]
ただし「CM」とだけ表記すると、この選手の特徴を十分説明できません。チームによっては2ボランチの一角、アンカー、攻撃的な8番、10番に近い位置まで担当できます。
現代サッカーの番号で表現するなら、6番・8番・10番を一定水準以上でこなせるものの、一番エンソらしさが出やすいのは自由度のある8番と考えると理解しやすいでしょう。
6番・8番・10番の違いから見るエンソ
| 役割 | エンソの適性 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 6番・アンカー | 高い | 後方から配球し試合を組み立てる |
| 8番・セントラルMF | 非常に高い | 組み立て、前進、守備、エリア侵入を兼任 |
| 10番・トップ下 | 対応可能 | ラストパスやエリア付近での連係 |
チェルシー側もエンソを一つの役割へ限定していません。クラブ公式で紹介された評価でも、「深い6番」「ボックス・トゥ・ボックスの8番」「10番」のすべてをこなせる選手として説明されています。[参照:チェルシー公式]
つまり「本職はどこ?」という疑問が生じるのは当然です。エンソの場合、ポジション名よりもチーム内で何を担当しているかを見る方が分かりやすくなります。
最大の武器はパスによるゲームメイク
エンソの原点となる能力はパスです。短いパスをテンポよくつなぐだけでなく、逆サイドへの大きな展開、相手MFラインを越える縦パス、最終ライン裏への浮き球などを使い分けます。
本人もチェルシー加入直後、自分のプレースタイルについて「ボールを持ち、パスで組み立て、そこからスペースを攻撃するタイプ」という趣旨の説明をしています。[参照:チェルシー公式]
特に優れているのが、ただ横へボールを散らすのではなく、相手の守備ブロックの位置を確認して、次のラインまでボールを運ぶパスを選べることです。そのため最終ライン付近まで下がってボールを受けても、そこから攻撃を前進させられます。
ベンフィカ時代は「司令塔型ボランチ」に近かった
エンソがヨーロッパで一気に評価を高めたベンフィカ時代は、フロレンティーノ・ルイスと2ボランチを形成することが多く、後方からゲームを組み立てる役割が目立っていました。
Optaの分析でも、エンソはディープライイング・プレーメーカー、ボックス・トゥ・ボックスMF、ボール奪取役の性質を併せ持つオールラウンドMFとして評価されています。[参照:Opta Analyst]
この時期だけを見ると、トニ・クロースやチアゴ・アルカンタラのような「低い位置から試合を動かすMF」に近く見えます。しかし現在のエンソには、そこからさらに前へ出ていく能力があります。
アルゼンチン代表では低い位置から試合を作る
代表ではクラブよりもゲームメーカー色が強く出ることがあります。2022年ワールドカップでは中盤の低い位置に入り、センターバック付近まで下がってビルドアップに参加する場面も多く見られました。
この役割では、デ・パウルやマック・アリスターなど周囲のMFを動かしながら、エンソ自身は中央からパスを供給します。
そのためアルゼンチン代表だけを見ると「レジスタ」「ディープライイング・プレーメーカー」に分類したくなります。しかしそれはエンソの能力の一部分であり、クラブではより高い位置でも能力を発揮しています。
近年は「ボックスへ入る8番」として大きく進化
エンソのプレースタイルで近年特に変化したのが、ペナルティーエリアへの侵入です。
以前は後方からパスを出して攻撃を作る場面が目立ちましたが、現在は味方がサイドから攻撃しているときに遅れてエリアへ入り、クロスや折り返しへ合わせるプレーが増えています。
Optaはこの特徴を分析し、プレミアリーグでもエンソのボックス内へのランニングが大きな価値を生み出していると紹介しています。つまり現在は「パスを出したら仕事終了」ではなく、自分自身がフィニッシャーとして攻撃を完結させる選手になっています。[参照:Opta Analyst]
なぜエンソはゴールを取れるようになったのか
エンソは純粋なストライカーのように最終ラインへ張り続けるわけではありません。むしろ一度中盤へ下がるため、相手MFやDFの視界から消えやすくなります。
そこからサイド攻撃が始まった瞬間に後方からペナルティーエリアへ走り込みます。この「遅れて入る」タイミングが特徴です。
2025-26シーズンには公式戦15得点を記録し、チェルシーでチーム2位の得点数となりました。5得点はPKですが、それを差し引いてもMFとして高い得点力を発揮しています。[参照:チェルシー公式]
エンソはボックス・トゥ・ボックスなのか?
「ボックス・トゥ・ボックスMF」と呼んでも間違いではありません。ただし典型的なボックス・トゥ・ボックスとは少し違います。
例えば全盛期のヤヤ・トゥーレのように圧倒的な身体能力でボールを運ぶタイプでもなければ、エンゴロ・カンテのように広範囲を走り回ってボールを奪い続けるタイプでもありません。
エンソの場合は、パスとポジショニングを基準にしながら両方のペナルティーエリアへ関与する「ゲームメーカー型ボックス・トゥ・ボックス」と表現すると特徴を捉えやすくなります。
ドリブルで何人も抜くタイプではない
エンソは技術的に優れていますが、ドリブル突破を主武器とするMFではありません。
プレッシャーを受けた際にターンやボールコントロールで相手をかわすことはできます。しかしペドリやムシアラのように狭い場所で何人も抜きながら前進することが中心ではありません。
自分で10m運ぶより、味方へ一本のパスを出して20m前進させることを好むタイプです。この点もゲームメーカーとしての性格を表しています。
守備ではどんな選手?
エンソは守備をしない司令塔ではありません。球際へ積極的に入り、セカンドボールを回収し、プレスにも参加します。
チェルシー公式の試合分析でも、デュエル15回中9回勝利、ボールリカバリー4回といった守備面の貢献が紹介された試合があります。[参照:チェルシー公式]
ただし、守備専門アンカーとして最終ラインの前を一人で広範囲にカバーさせるより、守備力の高いMFと組ませた方が長所を出しやすい選手です。
カイセドとのコンビがエンソを理解するヒント
エンソの適性を理解するうえで分かりやすいのが、モイセス・カイセドのような守備能力の高いMFと一緒にプレーした場合です。
カイセドが中盤の守備やスペース管理を担当してくれると、エンソは低い位置でボールを受けるだけでなく、より自由に前方へ出ていけます。
つまりエンソ自身を完全なアンカーとして固定するより、後ろに守備能力の高い選手を配置し、エンソを8番として動かした方が「配球+チャンスメイク+ゴール」という複数の武器を同時に使いやすくなります。
エンソの弱点はスピードと広大なスペースの守備
万能型ではありますが、すべての能力が最高レベルというわけではありません。
特にスプリント能力で相手を追い回すタイプではないため、中盤の後ろに大きなスペースができる試合では苦しくなることがあります。トランジションで高速アタッカーと1対1になれば、身体能力だけで止めるのは難しくなります。
このためエンソを6番で使う場合には、チーム全体のポジショニングや周囲のサポートが重要です。「6番をできる」と「守備的アンカーとして一人ですべて処理できる」は同じ意味ではありません。
歴代選手ならトニ・クロースに近い部分がある
過去の名選手で比較するなら、まず名前を挙げやすいのがトニ・クロースです。
共通するのは、中央や低い位置からボールを大量に触り、左右への展開や縦パスによって試合をコントロールする能力です。ドリブル突破よりパスで局面を変えるという発想も似ています。
ただしクロースはエンソ以上にゲームコントロールと配球へ特化した選手でした。現在のエンソはクロースより頻繁にペナルティーエリアへ入り、得点を狙います。そのため「クロース的な配球能力を持ちながら、より8番的に上下動する選手」と考えると近いでしょう。
チアゴ・アルカンタラにも似ている
もう一人、プレースタイルの要素として近いのがチアゴ・アルカンタラです。
中盤の低い位置へ下がってボールを受け、相手のプレッシャーをかわしながら縦方向へボールを進める点は共通します。
ただしチアゴの方が狭いスペースでのターンやボールタッチによるプレス回避に特化しており、エンソの方が前線への飛び出しとゴールへの関与が多い傾向があります。
モドリッチとは似ている?
ルカ・モドリッチと比較されることもあります。ゲームを読む能力、パスレンジ、低い位置と高い位置の両方でプレーできるという点では共通点があります。
しかしモドリッチは身体の向きを変えながらドリブルで相手のプレスを突破する能力が非常に高く、自らボールを運ぶ能力ではエンソより上でした。
エンソはモドリッチほどドリブル主体ではなく、より早くパスを選択します。したがって完全なモドリッチ型ではありません。
ヴェラッティとの共通点もある
低い位置でボールを受けるエンソだけを見ると、マルコ・ヴェラッティに近く感じる部分があります。
相手に寄せられてもボールを要求し、ショートパスを繰り返しながら中盤で試合のリズムを作るところは似ています。
ただしヴェラッティは低い位置での保持とプレス回避へ強く特化していました。一方のエンソは身長やエリア内への侵入能力を利用し、現在では得点まで狙います。ここにも違いがあります。
ランパードに似ているという見方はどう?
近年のエンソはゴール数が増えたため、チェルシーのレジェンドであるフランク・ランパードを連想する人もいるでしょう。
特に「後方からタイミング良くペナルティーエリアへ侵入して得点する」という部分には確かに共通点があります。
しかしプレースタイル全体はかなり異なります。ランパードは得点力と縦への推進力が最大の特徴だったのに対し、エンソの原点はゲームメイクです。したがってランパードに似ているのはボックスへの遅れての侵入という一部分と考えるのが適切です。
一人の歴代選手に当てはめるのが難しい
エンソが分かりにくい理由は、歴代の一人の選手へきれいに当てはめられないことにもあります。
| エンソの特徴 | 近い歴代選手 |
|---|---|
| 長短のパスとゲームコントロール | トニ・クロース |
| 低い位置での組み立て | チアゴ・アルカンタラ |
| 8番としての万能性 | ルカ・モドリッチ |
| 低い位置でボールを要求する性質 | マルコ・ヴェラッティ |
| 後方からのボックス侵入 | フランク・ランパード |
もちろん、それぞれの選手と能力やレベルが完全に同じという意味ではありません。「プレースタイルのどの部分が近いか」を整理した比較です。
一人だけ選ぶなら、ベンフィカ・アルゼンチン代表時代のエンソはクロース寄り、現在のクラブでのエンソはそこへボックス・トゥ・ボックス的要素を追加したタイプと考えるとイメージしやすいでしょう。
ピルロ型のレジスタとは何が違う?
後方からパスを出すため、アンドレア・ピルロのようなレジスタに分類したくなる場合もあります。
ただしピルロは基本的に中盤の底からゲームを作り、自分自身が頻繁にペナルティーエリアへ飛び込む選手ではありませんでした。
エンソは低い位置から組み立てられるうえ、そのまま前線まで移動して攻撃へ参加できます。そのため純粋なレジスタより明らかに活動範囲が広い選手です。
デ・ブライネ型とも少し違う
高い位置でプレーするエンソを見ると、ケヴィン・デ・ブライネのような攻撃的8番との比較も考えられます。
ただしデ・ブライネはラストパス、クロス、ドリブルによる前進など最終局面での破壊力へ強く特化しています。
エンソはそれより低い位置での組み立て能力が高く、試合によっては自陣ペナルティーエリア付近まで下がります。つまりエンソの方が「中盤全体をつなぐ」性格が強いといえます。
エンソを最も生かしやすい配置
エンソの能力を最大限引き出すなら、守備力の高い6番を近くへ配置し、その前または横で8番としてプレーさせる形が有力です。
ビルドアップでは下がって6番のようにボールを受け、攻撃が前進すれば相手MFの背後へ移動します。そしてサイド攻撃になればペナルティーエリアへ飛び込みます。
この使い方なら「ゲームメイクだけ」「守備だけ」「攻撃だけ」に限定されず、エンソの万能性そのものを武器にできます。
試合を見るときはエンソの「ボールを持っていない動き」に注目
エンソの良さを理解したい場合、ボールを持った場面だけを見るより、パスを出した後の動きを追うのがおすすめです。
例えばセンターバックからボールを受けて左サイドへ展開した後、その場に残るのか、それとも前方のハーフスペースへ移動するのかを見ます。
そのまま攻撃が右サイドへ移れば、エンソが逆サイドからペナルティーエリアへ侵入することがあります。この連続したポジション変更こそ、現在のエンソを単なるボランチと呼びにくい理由です。
エンソは「何でもできるからポジションが分かりにくい」選手
サッカー選手には特徴が明確なタイプもいます。守備専門アンカーならロドリ型、トップ下なら純粋なチャンスメイカー、ボックス・トゥ・ボックスなら運動量型と分類しやすくなります。
エンソはその境界にいます。後方で100本近くパスを配る試合があれば、高い位置へ入りゴールを取る試合もあります。
そのため「ポジションが定まっていない」というより、複数の中盤ポジションで試合の要求に応じて役割を変更できること自体が特徴と捉える方が正確でしょう。
まとめ|エンソは「クロース系の司令塔+攻撃的8番」のハイブリッド
エンソ・フェルナンデスのプレースタイルを最も簡潔に表現するなら、パスを中心に試合を組み立てながら、現在ではボックスまで進出して得点も狙う万能型セントラルMFです。
ポジションは基本的に8番が最も能力を発揮しやすいものの、6番として後方からゲームを作ることもでき、10番として相手MFとDFの間でプレーすることもできます。チェルシー側からも、この3つの役割をこなせる能力が評価されています。[参照:チェルシー公式]
最大の長所はパスレンジと状況判断で、低い位置からショートパス、縦パス、サイドチェンジを使って攻撃を前進させます。一方、近年はペナルティーエリアへのランニングも大きな武器となり、2025-26シーズンには公式戦15得点7アシストを記録しました。[参照:チェルシー公式]
歴代選手との比較では、一人へ完全に当てはめるのは難しいものの、配球能力ではトニ・クロース、低い位置でのゲームメイクではチアゴ・アルカンタラやヴェラッティ、万能な8番という意味ではモドリッチ、ボックスへの遅れての侵入ではランパードに似た要素があります。
ただしモドリッチほどドリブル主体ではなく、ランパードほど得点特化でもなく、ピルロほど低い位置へ固定されてもいません。そのため最もイメージしやすい表現は、「クロース系のゲームメーカーをベースに、現代的なボックス・トゥ・ボックス能力と得点力を加えた8番」でしょう。
エンソを見るときは「今日はボランチなのかトップ下なのか」だけを見るのではなく、ビルドアップ時にどこまで下がり、攻撃が前進した後にどこまで上がっているかを見るとプレースタイルが理解しやすくなります。一つのポジションに固定しづらいことこそ、エンソ・フェルナンデスというMFの特徴です。


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