船舶の操船では、着岸前の微速前進や後進操作など、現在船が前進しているのか後進しているのかを正確に把握することが非常に重要です。しかし、レーダーや航海計器に表示される速力には複数の種類があり、表示方法によって判断が難しい場合があります。
この記事では、船舶レーダーや航海計器で表示される対水速力(STW)と対地速力(SOG)の違い、後進状態を確認する際にどの表示を見るべきか、着岸時の操船で注意すべきポイントについて詳しく解説します。
船舶で表示される速力には種類がある
船舶の速度表示には、主に「対水速力(STW:Speed Through Water)」と「対地速力(SOG:Speed Over Ground)」があります。この2つは似ていますが、意味が異なります。
対水速力は、船が周囲の水に対してどれだけ進んでいるかを示す速度です。一方、対地速力はGPSなどを利用して、地面に対して船がどれだけ移動しているかを示す速度になります。
例えば、潮流が強い場所では、エンジンを停止していても船が流されることがあります。この場合、対水速力は0ですが、対地速力は流されている方向に速度が表示されます。
後進状態を判断する場合は対水速力の表示が重要
船が後進をかけた場合、基本的には対水速力(STW)の表示がマイナスになることで、船が水に対して後ろへ動いていることを確認できます。
例えば、対水速力が「-0.5kn」「-1.0kn」のように表示されている場合、船体は水に対して後進している状態と判断できます。
一方で、対地速力(SOG)はGPSによる移動結果を表示しているため、船の向きや潮流の影響を受けます。そのため、後進を開始した瞬間に必ずマイナス表示になるとは限りません。
SOGがマイナスにならない理由
多くの船舶用GPSや航海計器では、対地速力は進行方向の大きさだけを表示し、後進時でもマイナス記号を表示しない仕様があります。
例えば、前進中にSOGが0.3kn、0.2kn、0.1kn、0knまで低下した後、後進をかけると0.1kn、0.2knと増えていく表示になる場合があります。
これは船が停止状態を通過して、反対方向へ移動し始めたことを示していますが、SOGだけでは前進なのか後進なのかを判断できない場合があります。
後進を確実に確認するために見るべき情報
操船中に前進・後進を確実に判断したい場合は、SOGだけを見るのではなく、複数の情報を合わせて確認することが重要です。
特に確認すべきものは以下のような項目です。
- 対水速力(STW)の符号表示
- 船尾方向への船体移動量
- エンジンテレグラフや機関状態表示
- GPSによる船首方位と移動方向
例えば、着岸前に「ストップエンジン」「スローアヘッド」「ストップエンジン」などを繰り返す場合、エンジン操作だけではなく、実際に船体がどちらへ動いているかを確認する必要があります。
対水速力がマイナス表示される場合の考え方
対水速力がマイナス表示される機器であれば、その表示は後進判断の有力な情報になります。船が水に対して後ろへ移動しているため、操船者にとって非常に分かりやすい指標です。
ただし、すべての船舶や航海計器が同じ表示仕様とは限りません。機器によっては、速度の方向表示が別項目になっていたり、単純な数値表示のみの場合もあります。
そのため、実際の操船では自船に搭載されている航海計器の仕様を理解し、試運転時などに前進・後進時の表示変化を確認しておくことが大切です。
着岸操船では速度表示だけに頼らないことが重要
岸壁への接近時は、わずかな速度でも船体への影響が大きくなります。そのため、速度表示だけではなく、船首や船尾の動き、岸壁との距離、風や潮流の影響も総合的に判断します。
例えば、SOGが0.2knと表示されていても、潮流によって船が岸壁方向へ押されている場合があります。逆に後進をかけても、慣性によってしばらく前進方向へ移動することもあります。
熟練した操船者は、計器の数値だけではなく、船の挙動全体を見ながら現在の状態を判断しています。
まとめ:後進判断はSOGではなくSTWや複数情報で確認する
船舶が現在前進しているのか後進しているのかを判断する場合、対地速力(SOG)だけを見ることは適切ではありません。
SOGは潮流やGPS表示方式の影響を受け、後進時でもマイナス表示にならない場合があります。そのため、後進状態の確認には対水速力(STW)の表示やエンジン状態、船体の動きを合わせて判断することが重要です。
特に着岸前の微速操船では、計器の特徴を理解し、自船の表示仕様を把握しておくことが安全な操船につながります。


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