プロボクシングの最重量級であるヘビー級では、長い歴史の中でアメリカをはじめ、イギリスや旧ソ連圏などさまざまな国の選手が世界王座を獲得してきました。では、ロシアは主要団体であるWBAやWBCの世界ヘビー級チャンピオンを輩出したことがあるのでしょうか。
結論から整理すると、ロシアからはWBA世界ヘビー級王者もWBC世界ヘビー級王者も誕生しています。特に代表的なのがニコライ・ワルーエフとオレグ・マスカエフです。ただし、ロシア出身、ロシア国籍、旧ソ連出身という分類は選手によって異なるため、歴史を確認するときには注意が必要です。
ロシアにはWBA世界ヘビー級チャンピオンがいる
ロシアのWBAヘビー級王者として非常に有名なのが、ニコライ・ワルーエフ(Nikolai Valuev)です。ロシア・レニングラード(現在のサンクトペテルブルク)出身で、2メートルを大きく超える身長を持つ超大型ヘビー級として知られています。
ワルーエフは2005年12月、ジョン・ルイスに判定勝ちしてWBA世界ヘビー級王座を獲得しました。その後タイトルを防衛し、2007年にルスラン・チャガエフに敗れて王座から陥落します。
さらに2008年にはジョン・ルイスとの再戦を制してWBA王座を再び獲得。2009年にデビッド・ヘイに判定で敗れるまで王座を保持しました。したがって、ロシアがWBA世界ヘビー級チャンピオンを輩出したことがあるかという点については、明確に「ある」といえます。
WBC世界ヘビー級ではオレグ・マスカエフが王者になっている
WBCについて代表的なのがオレグ・マスカエフ(Oleg Maskaev)です。マスカエフは旧ソ連時代のカザフ・ソビエト社会主義共和国で生まれた選手で、後にロシア国籍を取得しています。
2006年8月、マスカエフはハシーム・ラクマンを破り、WBC世界ヘビー級王座を獲得しました。その後、ピーター・オケロを相手に防衛に成功しています。
2008年にはサミュエル・ピーターに敗れて王座から陥落しましたが、ロシア国籍の選手がWBC世界ヘビー級王者になった実例として重要な存在です。
WBAのワルーエフとWBCのマスカエフを比較
ロシアとWBA・WBCヘビー級王座の関係を簡単に整理すると、次のようになります。
| 選手 | 主要王座 | 初戴冠 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ニコライ・ワルーエフ | WBA世界ヘビー級 | 2005年 | ロシア生まれ。WBA王座を2度獲得 |
| オレグ・マスカエフ | WBC世界ヘビー級 | 2006年 | 旧ソ連のカザフスタン生まれ。ロシア国籍を取得 |
このように、2000年代中盤にはWBAとWBCのヘビー級でロシアに関係する選手が同時期に世界王者となっていました。
ただしワルーエフとマスカエフでは出生地や国籍の経歴が異なります。「ロシア生まれの王者」という条件ならワルーエフが非常に分かりやすい一方、「ロシア国籍のWBC王者」という意味ではマスカエフが該当します。
旧ソ連圏まで広げるとヘビー級の世界王者はさらに多い
ロシアのヘビー級史を調べる際に混同しやすいのが、ロシアと旧ソ連諸国は同じではないという点です。ソ連崩壊後はロシアだけでなく、ウクライナ、カザフスタン、ウズベキスタンなどがそれぞれ独立国家になっています。
例えばビタリ・クリチコとウラジミール・クリチコは旧ソ連出身ですが、ボクシング史では基本的にウクライナの選手として扱われます。ビタリはWBC、ウラジミールはWBA・IBF・WBOなどのヘビー級王座を長期間保持しました。
また、アレクサンデル・ポベトキンはロシア出身の強豪ヘビー級で、WBAの王座を保持した実績があります。ただしWBAでは時期によって「スーパー」「レギュラー」など複数の王座が並立していたため、歴代王者を比較する場合は当時の王座区分まで確認することが重要です。
なぜ旧ソ連圏から重量級の強豪が多く登場したのか
旧ソ連にはアマチュアボクシングの強固な育成システムがあり、オリンピックをはじめとする国際大会で数多くの有力選手を輩出してきました。一方、ソ連時代には西側諸国のようなプロボクシングへの進出が一般的ではありませんでした。
1991年のソ連崩壊後は状況が変化し、旧ソ連圏の優秀なアマチュア選手がプロへ進出するケースが増加します。1990年代後半から2000年代にかけて重量級でも存在感を急速に高め、クリチコ兄弟、ワルーエフ、マスカエフ、ポベトキンなどが世界のトップ戦線で活躍しました。
そのため、2000年代以降の世界ヘビー級史を見る場合、アメリカ中心だった以前の時代と比べて、東欧・旧ソ連圏の選手の存在感が大きくなったことが分かります。
ロシア人初の世界ヘビー級王者を考える際の注意点
「ロシア初の世界ヘビー級王者は誰か」という問いでは、どの団体・どの王座を世界王座として扱うのかによって説明が変わることがあります。特にWBAは複数王座制度を採用していた時期が長く、単純に「WBA王者」という肩書だけで比較すると誤解が生じる場合があります。
また、マスカエフのように出生地と後の国籍が異なる選手もいます。そのため、正確に整理するなら「ロシア生まれ」「ロシア国籍」「旧ソ連出身」の3つを区別するのがおすすめです。
少なくともWBAとWBCについては、ロシアに関係するヘビー級世界王者の実績が存在しており、WBAではニコライ・ワルーエフ、WBCではオレグ・マスカエフが代表的な存在となっています。
まとめ
ロシアはWBA・WBCともにヘビー級世界チャンピオンを輩出しています。WBAではロシア出身のニコライ・ワルーエフが世界王座を2度獲得し、WBCではロシア国籍を持つオレグ・マスカエフが2006年に世界王者となりました。
さらに旧ソ連圏全体まで対象を広げれば、クリチコ兄弟をはじめ世界ヘビー級史に残る王者が多数存在します。ロシア単独の実績を調べる際には、出生地と国籍、旧ソ連という歴史的区分、そしてWBAの王座区分を分けて考えると理解しやすくなります。
したがって、「ロシアはWBAやWBCのヘビー級王者を出したことがない」という認識は正しくありません。2000年代の世界ヘビー級戦線では、ロシアおよび旧ソ連圏のボクサーが非常に大きな存在感を示していました。


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