世界最大級の「一枚岩(モノリス)」として、オーストラリアのマウント・オーガスタスとウルル(旧称エアーズロック)が紹介されることがあります。そのため「1位がマウント・オーガスタス、2位がウルルなら3位はどこなのか」と考えたくなりますが、地質学的にはこのランキングには大きな問題があります。
結論からいうと、世界で3番目に大きい一枚岩を科学的に確定することはできません。そもそもマウント・オーガスタスを「世界最大の一枚岩」とする説明自体が現在の地質学では否定されており、「モノリス」という言葉にも世界共通の地形学的ランキング基準がないためです。
一方で、観光情報などではモーリタニアのベン・アメラ(Ben Amera)、南アフリカ地域の巨大岩体、オーストラリアのマウント・ウディナやコカービン・ロックなどが「巨大なモノリス」として紹介されています。この記事では、なぜ3位を決められないのか、マウント・オーガスタスとウルルは実際にはどのような地形なのかを整理します。
- 「マウント・オーガスタスが世界最大の一枚岩」は地質学的には正しくない
- マウント・オーガスタスは何なのか?
- ウルルはマウント・オーガスタスとは地質構造がかなり違う
- なぜ「世界最大・2番目・3番目」というランキングを作れないのか
- 「3番目」としてよく候補に挙がる岩はある?
- オーストラリア国内にも「2番目・3番目」を名乗る岩がある
- 「一枚岩」と「単一の岩石種類」は同じ意味ではない
- ESAなど古い資料ではマウント・オーガスタス1位、ウルル2位と紹介されている
- 「世界最大の岩」という表現にも注意が必要
- マウント・オーガスタスとウルルを比較するとどう違う?
- 地質学的には「何位か」より形成過程を見る方が面白い
- 結局「3番目」は何と答えるのが正確?
- まとめ|「世界3位」は存在せず、前提となる1位・2位ランキングも要注意
「マウント・オーガスタスが世界最大の一枚岩」は地質学的には正しくない
マウント・オーガスタス(Burringurrah)は西オーストラリア州にある巨大な地形で、周囲の平原から約700m以上立ち上がる非常に目立つ山です。観光案内などでは長年「世界最大の一枚岩」「ウルルの約2倍」と紹介されてきました。
しかし、西オーストラリア州の公園当局は現在、マウント・オーガスタスをモノリスと呼ぶのは誤りだと明確に説明しています。実際には複数種類の岩石からできた「非対称背斜(asymmetric anticline)」であり、単独の一枚岩ではありません。[参照:西オーストラリア州 Department of Biodiversity, Conservation and Attractions]
地質調査でも、主成分となるマウント・オーガスタス砂岩のほか、花崗岩や変成岩などが存在することが確認されています。したがって「巨大な一つの岩塊」という意味でのモノリスには該当しません。
マウント・オーガスタスは何なのか?
西オーストラリア州の公式解説では、マウント・オーガスタスは主に約16億年前の砂岩からなる巨大なインゼルベルク(inselberg=周囲の平地から孤立して立ち上がる山)として説明されています。[参照:Explore Parks WA]
さらに地層自体が地殻変動によって折り曲げられ、アーチ状の背斜構造になっています。つまり巨大な岩が地面に置かれているような構造ではなく、地層の一部が隆起・褶曲し、その後周囲が侵食された結果として現在の山が残りました。
2010年に発表された地形・地質研究でも、マウント・オーガスタスには変成岩や火成岩が含まれるためモノリスとは呼べず、「世界最大のモノリス」という主張には根拠がないとされています。[参照:Mount Augustus Geology and Geomorphology]
ウルルはマウント・オーガスタスとは地質構造がかなり違う
ウルルはオーストラリア中央部にある巨大な砂岩地形で、周囲の平原から約345m立ち上がっています。Geoscience Australiaによると、地表面積は約3.3平方km、基部の周囲は約9.4kmです。[参照:Geoscience Australia]
約5億年前に堆積した砂岩が、その後の地殻変動によってほぼ垂直に傾き、周囲の地層が侵食されて現在の形が残りました。地表に見えている部分よりも地下へ岩体が続いていることも知られています。
ウルルは一般的には「monolith」と紹介されることがありますが、学術的には巨大な砂岩の残丘・インゼルベルクとして扱う方が正確です。2015年の査読研究では、そもそも「monolith」という言葉がさまざまな意味で使われすぎているため、地形学用語として使用しない方がよいとの見解も示されています。[参照:Bourman, Ollier & Buckman, 2015]
なぜ「世界最大・2番目・3番目」というランキングを作れないのか
最大の問題は、「一枚岩」の大きさを測る世界共通ルールが存在しないことです。
例えば、高さだけで比較するのか、地表に露出している体積で比較するのか、基部面積で比較するのか、地下部分まで含めるのかによって順位は大きく変化します。
| 比較方法 | 問題点 |
|---|---|
| 高さ | 細長く高い岩が有利になる |
| 地表面積 | 低く横長の岩体が有利になる |
| 体積 | 地下形状を正確に測定しにくい |
| 周囲からの比高 | 周囲の地形によって数値が変わる |
| 単一岩種かどうか | 堆積岩にはもともと複数の層が存在する |
さらに「一枚岩」を厳密に一つの岩石ブロックと定義すると、巨大な山や残丘の多くは対象外になります。そのため学術論文では、巨大地形についてモノリスという曖昧な表現より、インゼルベルク、ドーム、背斜、残丘など具体的な地形・地質用語を使用します。
「3番目」としてよく候補に挙がる岩はある?
科学的な3位は存在しませんが、インターネット上の巨大モノリス一覧ではいくつかの候補が頻繁に登場します。その代表例が西アフリカ・モーリタニアのベン・アメラ(Ben Amera/Ben Amira)です。
ベン・アメラはサハラ砂漠にある巨大な孤立岩体で、周囲の砂漠から約633m立ち上がると紹介され、「アフリカ最大のモノリス」「世界で2番目」と呼ばれることがあります。ただし、この順位も世界共通の地質学的測定によって確定されたものではありません。
つまり「マウント・オーガスタス1位、ウルル2位」というランキングを前提にするとベン・アメラなどが3位候補として紹介される場合がありますが、別の観光資料ではウルル1位、ベン・アメラ2位とされることすらあります。この食い違い自体が、公式ランキングが存在しないことを示しています。
オーストラリア国内にも「2番目・3番目」を名乗る岩がある
さらに話を複雑にしているのが、オーストラリア国内だけでも複数の「第2位」「第3位」とされる岩が存在することです。
南オーストラリア州のマウント・ウディナ(Mount Wudinna)は「オーストラリアで2番目に大きいモノリス」、西オーストラリア州のコカービン・ロック(Kokerbin Rock)は「3番目」と紹介されることがあります。
しかし、これも対象を花崗岩系の露岩に限定するのか、面積を基準にするのかなど、定義によって順位が変わります。「世界3位」というランキングを探す場合には、何を基準としているランキングなのかを必ず確認する必要があります。
「一枚岩」と「単一の岩石種類」は同じ意味ではない
巨大な地形を見て「全部同じ砂岩だから一枚岩」と考えることもありますが、地質学的には少し違います。
例えばマウント・オーガスタスの主要部分を構成するMount Augustus Sandstoneは、単純な一種類の均質な岩石ではありません。西オーストラリア州地質調査所の資料では、砂岩、礫質砂岩、礫岩、少量のシルト岩などから構成され、最大約1,400mもの厚さを持つ地層として記載されています。[参照:Geological Survey of Western Australia]
これらが褶曲して山を形成しているため、「一個の巨大な石」と考えるより「巨大な地層構造」と理解した方が実態に近くなります。
ESAなど古い資料ではマウント・オーガスタス1位、ウルル2位と紹介されている
混乱する理由の一つは、信頼性の高そうな機関の古い記事にも「マウント・オーガスタスが世界最大、ウルルが2番目」とする記述が残っていることです。
例えば欧州宇宙機関(ESA)が2005年に掲載したウルルの記事では、ウルルを「マウント・オーガスタスに次ぐ世界第2位のモノリス」と紹介しています。[参照:ESA]
しかし、その後の地形学研究や西オーストラリア州公園当局の現在の説明では、マウント・オーガスタスは複数の岩種からなる背斜であり、モノリスという分類自体が否定されています。情報を見る際には、掲載元だけでなくいつ書かれた情報なのか、地質学的な定義を使っているのかまで確認する必要があります。
「世界最大の岩」という表現にも注意が必要
「世界最大の一枚岩」と「世界最大の岩」はさらに意味が違います。地球の地殻そのものは巨大な連続岩体からできているため、「どこからどこまでを1個の岩とするか」という境界設定が必要になります。
山の場合、地下で周辺の地層と連続しているケースも多く、地表に露出している部分だけを「一個」と数えることには地質学的な必然性がありません。
このため「世界最大の岩ランキング」は主に観光的な表現であり、世界最高峰のように統一された測定基準で順位を決められるものではありません。
マウント・オーガスタスとウルルを比較するとどう違う?
| 項目 | マウント・オーガスタス | ウルル |
|---|---|---|
| 所在地 | 西オーストラリア州 | ノーザンテリトリー |
| 地形 | 巨大なインゼルベルク | 砂岩の巨大な残丘・インゼルベルク |
| 構造 | 非対称背斜 | ほぼ垂直に傾いた砂岩層 |
| 周囲からの高さ | 約700~715m | 約345m |
| 主要岩石 | 約16億年前の砂岩など | 約5億年前の砂岩 |
| 厳密なモノリスか | 現在の公式地質解説では否定 | 一般にはモノリスと呼ばれるが用語自体が曖昧 |
見た目では似た巨大岩山に見えても、形成過程はかなり異なります。その意味でも単純に大きさだけを比較することには限界があります。
地質学的には「何位か」より形成過程を見る方が面白い
マウント・オーガスタスが非常に巨大であること自体は間違いありません。主要な砂岩は約16億年前に河川によって堆積し、その後地殻変動によって折り曲げられ、長期間の侵食によって現在の地形が作られました。[参照:西オーストラリア州公園当局]
ウルルも約5億年前に堆積した砂が固結し、地殻変動でほぼ垂直に傾いた後、周囲の柔らかい地層が侵食されることで現在の姿が残っています。[参照:Geoscience Australia]
どちらも「巨大な石が地面に置かれた」のではなく、数億~十数億年という地質学的時間による堆積、変形、隆起、侵食の結果です。
結局「3番目」は何と答えるのが正確?
最も正確な答えは、「世界で3番目に大きい一枚岩は、現在の地質学では決められていない」です。
「マウント・オーガスタスが1位、ウルルが2位」という有名な順位そのものが観光的な俗説で、マウント・オーガスタスは現在の西オーストラリア州公式解説でもモノリスではなく非対称背斜とされています。[参照:Explore Parks WA]
また、査読された地形学研究でも「monolith」という言葉にはあまりに多くの異なる基準が使われているため、地形学用語として使用しない方がよいと指摘されています。[参照:Bourman, Ollier & Buckman]
まとめ|「世界3位」は存在せず、前提となる1位・2位ランキングも要注意
マウント・オーガスタスを世界最大、ウルルを世界第2位の一枚岩とする説明は広く流布していますが、現在の地質学的知見に照らすと、そのまま順位として扱うのは適切ではありません。
マウント・オーガスタスは一枚岩ではなく、主に砂岩から構成された巨大な非対称背斜・インゼルベルクです。西オーストラリア州の公園当局も、「monolithと呼ばれることがあるが誤り」と明記しています。[参照:西オーストラリア州公式]
ウルルは巨大な砂岩地形であり、一般にはモノリスと呼ばれますが、「モノリス」という地形用語そのものに統一された科学的定義やランキング基準がありません。高さ、面積、体積、地下部分の扱いなど、何を「大きさ」とするかによって順位も変化します。
モーリタニアのベン・アメラが「世界第2位」などと紹介されることもありますが、これも公的な世界ランキングではありません。同様にマウント・ウディナやコカービン・ロックなどにも地域的な順位表現があります。
したがって「3番目はどこか」という問いに対しては、科学的に認定された3位は存在しないというのが最も妥当な結論です。「マウント・オーガスタス1位、ウルル2位、○○3位」というランキングを見つけた場合には、地質学上の公式順位ではなく、特定の観光サイトなどが独自の定義で並べたものと考えた方がよいでしょう。

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