野球中継や記事では、投手について「三振を奪うタイプではなく、打たせて取る投球が持ち味」「低めに集めて打たせて取った」と表現することがあります。この「打たせて取る」は、文字どおり打者にボールを打たせ、その打球を守備陣が処理してアウトを取る投球を表す言葉です。
特に典型的なのは、低めの球や変化球を打たせて弱い内野ゴロを量産する投球です。そのため「打たせて取る=ゴロを打たせること」と理解されることがありますが、厳密には内野ゴロだけに限定された表現ではありません。
フライを打たせてアウトにする場合でも、投手が打者を詰まらせたり芯を外したりし、意図した弱い打球として処理させているのであれば「打たせて取る」と表現できます。ただし、日本の野球用語ではゴロアウトを重ねる投手に対して使われることが特に多いため、実際の用例では少しニュアンスがあります。
「打たせて取る」の基本的な意味
「打たせて取る」とは、投手が三振だけを狙うのではなく、打者に打球を打たせ、その打球を野手に処理してもらうことでアウトを取る投球スタイルを指します。
例えば外角低めのツーシームを打たせて二塁ゴロにする、内角球で詰まらせて遊撃ゴロにする、変化球の芯を外して浅い外野フライにする、といった投球です。
重要なのは「打球を飛ばされても構わない」のではなく、強い打球を避けながら守備側がアウトにしやすい打球を打たせることです。
内野ゴロを打たせるのが代表的な「打たせて取る」投球
「打たせて取る」という言葉がゴロと強く結び付いているのには理由があります。ゴロは本塁打にならず、打球が弱ければ内野手が処理してアウトにしやすいためです。
特にシンカー、ツーシーム、シュートなど、打者の手元で沈んだり動いたりする球種を使う投手は、バットの芯を外してゴロを打たせることを狙います。低めへボールを集める投手も、打球が上がりにくいためゴロアウトを取りやすくなります。
例えば無死一塁で低めのツーシームを打たせ、遊撃手へのゴロから6-4-3のダブルプレーを取る場面は、「打たせて取る」の典型的な成功例です。
フライアウトでも「打たせて取る」と言える
一方、フライを打たせてアウトにした場合でも、「打たせて取る」という表現は使えます。言葉そのものは打球の種類をゴロに限定していないためです。
例えば投手が高めの速球で打者を詰まらせ、力のない二塁フライを打たせた場合や、外角球で芯を外して浅い右翼フライにした場合があります。こうした打球を意図的に生み出しているなら、広い意味では打たせて取ったアウトです。
ただし、単に高く上がっただけの大きな外野フライやフェンス際まで飛ばされた打球については、結果としてアウトになっても「うまく打たせて取った」とは表現されにくいことがあります。打球の質まで含めたニュアンスがあるためです。
なぜフライよりゴロのイメージが強いのか
日本の野球中継では、「低めへ丁寧に集めてゴロを打たせる」「変化球で芯を外して内野ゴロを量産する」といった投手に対して「打たせて取る」という言葉が頻繁に使われます。
その結果、「三振を取る投手」と対比して、「打たせて取る投手=ゴロピッチャー」というイメージが定着しています。
また、外野フライは打球角度や飛距離によっては長打・本塁打になる危険があります。一方、ゴロはフェンスを越えることがないため、投手側が意図して作る安全性の高い打球として説明しやすいのも理由です。
「三振を取る」と「打たせて取る」の違い
投手のアウトの取り方は、大きく分けると「打者から三振を奪う」と「インプレーの打球を野手に処理してもらう」の2種類があります。
| 投球スタイル | 主なアウトの取り方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 三振を取る | 空振り三振・見逃し三振 | 野手の守備に左右されにくい |
| 打たせて取る | ゴロ・フライ・ライナーなど | 球数を抑えやすい場合がある |
三振なら打球そのものが発生しないため、守備のエラーやヒットになる可能性もありません。その意味では最も確実なアウトの一つです。
一方で三振を狙いすぎると、追い込んでから何球もファウルで粘られるなど球数が増える場合があります。打たせて取る投手なら、初球や2球目で凡打を打たせ、一人の打者を少ない球数で終わらせることもできます。
「打たせて取る」はただストライクを投げることではない
打者に打たせるだけなら、真ん中へ甘いストライクを投げてもできます。しかし、それでは強いライナーや長打を打たれる可能性が高くなります。
打たせて取る投球では、バットには当てさせつつ、芯では捉えさせないことが重要です。球速差、変化、コース、高低などを利用し、打者が強いスイングをしても弱い打球になるよう誘導します。
例えば打者が速球を待っているところへ少し遅いカットボールを投げれば、タイミングがずれて三塁側への弱いゴロになることがあります。こうした結果は、単なる偶然ではなく投手と捕手の配球によって作られる場合があります。
ポップフライを打たせる投手もいる
投手によっては、ゴロではなく内野フライを多く打たせることを得意とするタイプもいます。特に高めの速球に威力がある投手は、打者のバットの下側へボールを当てさせ、力のないフライを生みやすい場合があります。
例えば高めのストレートを振らせて捕手後方へのファウルフライや二塁へのポップフライを打たせれば、野手が捕球するだけでアウトになります。これも投手が狙った打球であれば「打たせて取る投球」の一種です。
つまり、ゴロ型の「打たせて取る」だけでなく、フライ型の「打たせて取る」投手も存在すると考えると理解しやすくなります。
「打たせて取った」と「打たれて取った」は少し違う
似ているようで重要なのが、「打たせて取った」と「打たれたけれど結果的にアウトになった」の違いです。
例えば外野フェンスぎりぎりまで運ばれた大飛球を中堅手が好捕した場合、記録上はフライアウトです。しかし投手の狙いどおりの弱い打球だったとは言いにくく、「打たせて取った」というより「打たれたが野手に助けられた」と評価されることがあります。
逆にバットの根元で詰まらせて浅い中飛にしたのであれば、投手が打者を打ち取った内容として「打たせて取った」と表現しやすくなります。
ライナーアウトはどう考える?
ライナーも野手が直接捕ればアウトなので、広い分類では「打たせて取った」アウトに含めることはできます。ただし、ライナーは強い打球になっていることが多いため、一般的なニュアンスでは少し注意が必要です。
例えば時速150km級の鋭いライナーがたまたま三塁手の正面へ飛んでアウトになった場合、投手としてはかなり危険な打球を許しています。このようなケースを「狙いどおり打たせて取った」と評価することは少ないでしょう。
一方で芯を外して力のないハーフライナーにしたのであれば、打たせて取る投球の結果と見ることもできます。つまりアウトの記録だけではなく、どれくらい強い打球を許したのかも重要です。
ダブルプレーを狙う場面では特にゴロが重要
走者が一塁にいる場面では、ゴロを打たせることに大きな価値があります。内野ゴロなら一つの打球で二つのアウトを取る併殺が期待できるためです。
例えば1アウト一塁で投手が低めのシンカーを投げ、打者に二塁ゴロを打たせれば、4-6-3のダブルプレーで一気にイニングを終えられる可能性があります。
フライアウトでは通常、一つのアウトしか増えません。そのため、走者がいる場面で「打たせて取る」という戦術を強調するときは、ゴロを打たせる意味合いがさらに強くなります。
打たせて取る投手のメリット
打たせて取る投球には、球数を抑えやすいというメリットがあります。三振を取るには通常3ストライクが必要ですが、凡打なら初球でもアウトになります。
例えば1回を「初球二ゴロ、2球目遊ゴロ、初球右飛」で終えれば、わずか4球で三者凡退にできます。長い試合を投げる先発投手にとって、少ない球数でアウトを積み重ねられることは大きな利点です。
また、優れた守備陣がいるチームなら、あえて打球を発生させて守備力を活用することも合理的です。
一方で守備に左右されるデメリットもある
打たせて取る投球では、ボールがフェアゾーンへ飛ぶため、野手の守備力の影響を受けます。平凡なゴロでも野手がエラーすれば走者を出してしまいます。
また、コースが少し甘くなれば弱いゴロの予定が強いライナーや長打になることもあります。三振と違い、打球が発生した時点で一定のリスクがあります。
そのため現代野球では、「三振型」「打たせて取る型」を完全に分けるより、必要な場面では三振を取り、別の場面では早いカウントで凡打を打たせる投手が理想的とされることも多くあります。
実況での使われ方から意味を判断すると分かりやすい
野球中継で「今日は打たせて取るピッチングができていますね」と解説者が話す場合、実際には内野ゴロが多いケースがよくあります。
例えば「低めに球を集め、5回までに内野ゴロを10個取っている」という状況なら、典型的な打たせて取る投球です。一方、「外野フライばかりだが、どれも完全に詰まらせている」という場合にも同じ表現が使われる可能性があります。
つまり言葉の定義としてはフライも含められるものの、実際の野球用語としては「弱いゴロを打たせる投球」の意味合いが特に強いと覚えると、多くの実況や記事を自然に理解できます。
まとめ:「打たせて取る」はゴロ限定ではなくフライアウトも含められる
野球の「打たせて取る」とは、三振だけを狙うのではなく、打者に打球を打たせ、その打球を守備陣に処理してもらってアウトを取る投球を意味します。
内野ゴロを打たせるのが最も代表的ですが、フライを打たせてアウトにする場合も、広い意味では「打たせて取る」に含まれます。特に高めの球で詰まらせて内野フライにする、芯を外して浅い外野フライにするようなケースなら、投手が意図的に作った凡打と考えられます。
ただし、フェンス際まで飛ばされた大きなフライや強烈なライナーが偶然野手の正面へ飛んだような場合は、アウトになったとしても「うまく打たせて取った」とは表現されにくいでしょう。
「打たせて取る」の本質はゴロかフライかではなく、投手がバットの芯を外し、野手が処理しやすい凡打を意図的に打たせることです。その中でもゴロは長打になりにくく併殺も狙えるため、一般的には「打たせて取る投手=ゴロを多く打たせる投手」というイメージが強くなっています。


コメント